【タリバン】武装勢力と今後のアフガニスタン情勢の展望

タリバンとは?

タリバンはアフガニスタンで活動するスンニ派過激組織です。もともと1994年に結成した組織ですが、指導者らはソ連のアフガニスタン侵攻の反発し、戦争でも戦っていました。ただ、1989年にソ連がアフガニスタンから撤退した後も、アフガニスタン内では様々なグループで権力争いが起こっておりました。次第に影響力を増し、1996年にはアフガニスタンを制圧し、タリバン政権を樹立しました。

しかし、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の首謀者であったオサマ・ビンラディンをタリバンが匿っていて、引き渡しに応じなかったとして、今度はアメリカがアフガニスタンを侵攻しました。当初はオサマ・ビンラディンの確保とテロリストの温床となっていたタリバン政権の除去を目的に侵略しました。タリバン政権は同年に崩壊した一方で、中々首謀者らの確保やタリバンが唱えたイデオロギーを取り除くことが出来ず、タリバンによるテロ活動も増え、アメリカは思った以上に長い間アフガニスタンに関連することになってしまいました。

莫大なお金と死者が伴っていた長年の戦争に終止符を打ちたかったアメリカは、2020年にタリバンとの和平合意で2021年までの軍の完全撤退に合意しました。アメリカ軍の撤退をチャンスとみなしたタリバンは、少しずつ地方の州都を制圧し、8月16日には首都のカブールも制圧しました。

各国の反応

予想を上回るスピード(わずか10日)でアフガニスタンを次々に制圧したニュースを受け、アメリカ、イギリス、ドイツなどの国は大使館の閉鎖及び職員や駐在している国民の退去を早めました。また急遽、アフガニスタンに一時的に軍を派遣して、安全な退避を確保した。

タリバンからの報復を恐れ、アメリカ政府やアメリカ主導の有志連合に協力したアフガン通訳や女性人権活動家などを優先的に難民として受け入れる姿勢を複数の国が表明しています。イギリスとカナダは2万人を受け入れることを明らかにし、アメリカやドイツなどの国は今調整中だという。

今後の懸念

1)女性の権利

1996年から2001年までのタリバン政権では、女性の権利はほぼ無い状態であった為、今回のタリバン政権でも同じことが繰り返されるのでは無いかと不安に思っている人は大勢います。タリバンの報道官はイスラム法の中での女性の権利は守られると語る一方で、このイスラム法がどのように解釈されるのかは依然と曖昧ですが、前の民主政権と比べ権利が制限されるのは間違いないと思います。また、最近発表されたタリバンの暫定政権では女性の入閣は見送られ、女性課題省も廃止された事自体がタリバンの政治での女性に対する扱いが鮮明になりました。

2)不安定な情勢

タリバンが国民の了承を得ずにアフガニスタンを一方的に制圧し、民主政権が崩壊したことに対してまず国民はどう反応するのかが大切になると思います。タリバン政権をやむを得ずに受け入れるのか、或いは反発し、内戦が起きるのかなど。またタリバン政権はアフガニスタンに平和を取り戻すことはできるのか?

また、テロ活動を通じて政権を奪還できたからこそ、それに感化され他の組織によるテロ活動がより活発になるのではないかという懸念もあります。これに対して、タリバンは他国の人がアフガニスタンをテロ活動を行う目的で好き勝手に利用させないと約束しました。ただ、タリバンも過激なイスラムのイデオロギーを広める一環としてテロ活動は継続する可能性はあるので、不安定な情勢は続くと予想されます。

3)タリバンと中国の今後の関係

アフガニスタンはヨーロッパと中国を繋ぐ、一帯一路において重要な場所に位置しています。ヨーロッパへのアクセスをより確実にするためにも、アフガニスタンの安定は中国にとっても大切になってきます。国の再建や安定させる一環として、アフリカなどの国で行ってきた、高速や病院などインフラプロジェクトを支援する可能性は十分にあります。また、アフガニスタンには銅やリチウムなどの資源があり、これを採取することもできます。ただ、これまでアメリカなどヨーロッパの国々がアフガニスタン再建に失敗した中、中国は慎重に投資することが予測されます。

また、中国はタリバンの政権奪還に感化され、ウイグル自治区の独立派組織のテロ活動が活発になることを恐れています。なので、安全保証と引き換えにインフラプロジェクトの支援する可能性もあります。国内の安全を保証するためにも、中国にとってタリバンと良好な関係も持つインセンティブがあります。

4)政権の正当化か過激なイスラム法の解釈を優先するのか?

タリバンがアフガニスタンを制圧した今、彼らが政権を握っています。ただ、この20年国際社会の援助に頼り続けていた結果、アフガニスタンは経済的に自立する事ができませんでした。タリバンが政権を奪還した現在は、これまで幾度なく援助をしてきた欧米の国々や国際機関などは断固としてタリバンの過激なイスラム法の統治に反対し、援助を止めています。貧しい国を引き継いだ事によって、必然と他の国からの経済的がサポートが必要となりました。

しかし、過激なイスラム教を唱え、このような解釈を広めるべくテロ活動などを含む過激な活動を続ける組織をあまり支援してくれる国はいません。だからこそ、タリバンがアフガニスタンの正当な政府と国際社会に認められる為に、これまで女性差別やテロなどを含めたの活動をどこまで自粛するのか、或いは支援してもらう為に制限をする必要があるのかが個人的に気になります。

現地から見たイギリスの3度目のロックダウン

3度目のロックダウン

1月4日にイギリスは3度目のロックダウンに入りました。

この3度目のロックダウンは3月に始まった最初のロックダウンと同じで、必要不可欠なお店(スーパー、薬局など)以外は閉まっており、できるだけ家にいる事を奨励されています。

また、学校や大学も閉鎖していて、授業はオンラインに移りました。それと伴い、本来夏に行われる試験もほぼキャンセルされました。この3度目のロックダウンは少なくとも、2月の中旬までは続きます。

背景

恐ろしいことにイギリスでは1月3日の新規感染者数は5万4990人。11月の2度目のロックダウンで、感染者は少し減ったのものの、家族や友達と一緒に過ごすクリスマスや年末などの祝日が重なり、感染は拡大。イギリス政府はクリスマスなどの祝日は一緒に住んでいない人と会わないように呼びかけたが、当然聞かない人もみられた。

その結果、感染者も爆発的に増え、病床もほぼ埋まっている地域もある。コロナで入院している人もピークの4月と比べ増えていて、病院も危険な状態にいる。

https://www.bbc.co.uk/news/uk-55538937

国民の不満

もちろん、どの国でもロックダウンやコロナ対策によって人々のストレスや不満は増えたと思う。ただイギリスでは、ジョンソン首相の度々変わる発言は国民を混乱させている。例えば、ジョンソン首相はロックダウン中でも学校は封鎖しないと宣言したが、このロックダウンでは閉鎖し、多くの保護者や生徒にショックを与えた。

また、最近はスコットランドのコロナ対策をコピーしていると指摘されつつある(因みにスコットランドはイギリスよりも早くロックダウンする事を発表した)。もちろん、経済や医療などの要素を上手くバランスする事は難しいですが、国民も不満が溜まりすぎるとコロナ対策やロックダウンに応じない人も出てきます。

今後の展開

ジョンソン首相は2月中旬までに、「上位4つの優先グループ」の全員にワクチン(約1,300万人)の初回投与を提供したいと述べました。

優先リストの最上位は、介護施設に住んで働いている人々、80歳以上の人々です。2番目にはNHSスタッフを含む最前線で働く医療関係者および社会福祉従事者です。

次のリストは75歳以上の人々であり、4番目のグループは70歳の人々と臨床的に非常に脆弱で人々です。この最後のグループには、臓器移植や癌患者などの人々が含まれます。

コロナにかかって危険な人達をできるだけ多くワクチンで接種することが今後のロックダウン緩和の鍵となります。

イギリスでは、Pfizer/BioNTech、Moderna、Oxford/AstraZeneca のワクチンが承諾されています。他の国に比べ、豊富なワクチン種類も揃っていることから、これから行われる接種が上手くいく事を願っています。

最後に

正直この3度目のロックダウンは誰にとっても辛いです。

最低でも2月中旬まで続くと考えると色々不安になります。私は本来今週大学に戻る予定でしたが、もういつ戻れるかが分からない。早くても、2月中旬に戻れても春休み前に対面授業は全て終わってしまう為(そのあとは自習の期間に入るので)、なんだかもう今年の大学生活がほぼ潰れた感じがします。

もうかなり長い期間を家で過ごしているので、精神的にもどれくらい保つか分かりませんが、未来の為にかなりの犠牲を払っているのが今のイギリスです。

リンカーンの名言~人民の、人民による、人民のための政治~

アメリカ史上唯一の大規模な内戦を終結させ、アメリカ合衆国を守ったリンカーン大統領。今回は、リンカーン大統領の2つの有名な演説を紹介します。

ゲティスバーグ演説

government of the people, by the people, for the people

これをどこかで見た、あるいは聞いたことがある人も少なくないと思います。

この部分だけ和訳すると、人民の、人民による、人民のための政治という意味になります。

これは有名な、リンカーン大統領が1863年11月19日にゲティスバーグで行った演説の抜粋です。

このスピーチはたった2分ほどの短いものでしたが、南北戦争真っ只中の人々の心を掴むのには充分でした。

演説の冒頭でリンカーンは

87年前、私たちの先祖は、自由の精神に抱かれ、人は皆平等の下に創られているという信条に捧げられた新しい国家を、この大陸に誕生させた。

と述べています。

当時奴隷制度の賛否によりアメリカ合衆国が二分していた状況の中、人権派であり奴隷制度に反対していたリンカーン大統領は、どのような目的、信条の下でアメリカ合衆国が建国されたのかを確認したのです。

戦場にもなったゲティスバーグでのこの演説は、南北戦争を戦う北軍兵士、あるいは差別と戦う南部の黒人たちの士気を高めるものになりました。

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2つに割れた家

リンカーンはゲティスバーグ演説だけでなく、数々の演説を行い人々の心を掴んできました。

名言として現在にまで語り継がれているものも多くあります。

1858年、リンカーンが大統領になる前のことです。共和党から上院選の候補者に指名されたリンカーンは北部と南部の溝が深まっていった50年代後半のアメリカに対し、このように述べました。

自らに対してふたつに割れた家は、立っていられません。この政府は、半分が奴隷、半分が自由民では長く続くことはできないと確信しております。

当時、北部が自由州、南部は奴隷州でした。演説では奴隷と自由民について触れていますが、これはもちろん南北の対立のことを示しています。

リンカーンは戦争になることには反対しており、割れた家が再び一つの家に戻ることを願っていたのです。

しかし、その3年後の1861年、

どちらも戦争を否定しておりました。しかし、片方が国家を生き延びさせるより、戦争を望んだのであります。そして他方は滅ぼされるぐらいなら、戦争を受け入れたのです。そこで内乱となりました。

と述べました。

南部諸州がアメリカ合衆国を離脱し南部にある合衆国保有のサムター要塞の引き渡しを迫られた時、北軍(合衆国)はこれを拒否し、南北戦争へと突入したのです。

まとめ

彼は政治家人生の中で多くの演説をし、名言を残してきました。

アメリカ合衆国と民主主義を守った偉大な大統領の言葉には、やはり聴く者の心に響くmagicがかけられているのでしょうか。

イギリス政党をわかやすく解説

イギリスはエリザベス女王を国家元首とした政党政治が展開されている国です。
そんなイギリスの政党を紹介します。

イギリスの政党制度

イギリスは単一国家で国王(女王)はいますが、政治的権限は全く持っていません。

選挙は小選挙区制で政権交代が起きやすく、その為二大政党化が進みやすいと言われています。

イギリス憲法には単一の法典ではなく、成文法判例法慣習法などのさまざまな要素を組み合わせたものが憲法と見なされています。

現在のイギリス下院議会の議席状況

Hung parliament and 70 Lib Dem MPs: What the general election result would have been if we used a PR system-INDEPENDENT

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政党の紹介

保守党(Conservative Party)

スローガン:“Build back better”

Build Back Better|Conservatives

党首:ボリス・ジョンソン

政治的思想:保守主義

  • NHS(国民医療制度)への追加資金を提供。また毎年5万人の新しい看護師を雇い、5000万人分の手術の予約を可能にする
  • 所得税、付加価値税、国民保険の税率を引き上げない
  • 2050年までに温室ガス排出実質ゼロの目標を達成するために持続可能なエネルギーとグリーンインフラに投資
  • EU離脱

保守党が2019年の秋に行われた総選挙で過半数以上の議席を獲得した背景には、国民投票から3年たったEU離脱問題を早く解決し、NHSやインフラなどの問題に取り組む事を期待されていたことが挙げられます。

しかし、この10年保守党が行った緊縮財政政策がコロナの影響で裏目に出てしまいました。

コロナ以前に資金不足で苦しんでいたNHSはコロナの対応で医療崩壊寸前の状態、ブレグジット交渉は全く進まないのに、コロナ感染者数はまた増え続け、医療崩壊を防ぐためにも二度目のロックダウンが12月まで実施される予定です。

ジョンソン首相は「二度目のロックダウンはやりたくない」とずっと言っていたのにもかかわらず、一転と態度を変えた事をよく思う人はあまりいません。

イギリス政府は他の国と比べ、コロナ対策を実施するのが遅く、国民にも不人気という事から、ジョンソン首相に対する世間からの支持はこれをきっかけに下がると思います。

労働党(Labour Party)

スローガン:”A new leadership”

LABOUR

党首:キア・スターマー

政治的思想:社会民主主義

  • 国民保険と所得税の税率を凍結する一方で、年間80,000ポンド以上の収入がある人には、所得税をあげる
  • インフラの投資(特に北イングランド)
  • NHSに対して年間支出のうち平均で4.3%を投資する
  • 合意なしのブレグジットに反対

2019年総選挙で大敗を喫し、保守党が過半数以上の議席を獲得するという状態に陥ってしまいました。

敗因として挙げられるのが労働党が掲げたブレグジットに関する「二度目の国民投票」が国民の支持を得られなかった事、コービン党首が党内の反ユダヤ主義問題に対処になかった事でしょう。

大敗の責任をとり、コービン党首が党首の座から退いた事で今年労働党の新党首にキア・スターマーが選ばれました。

スターマー氏の当選で党のイメージアップを行おうとしていると同時にジョンソン首相のコロナウイルス対策に対する国民の不満が少しずつ募っている事から、次首相になる可能性がある政治家です。

スコットランド国民党(Scottish National Party)

Scottish National Party

党首:ニコラ・スタージョン

政治的思想:社会民主主義、スコットランド愛国主義

  • 合意なしのブレグジットに反対(62%のスコットランド人が離脱に反対した為)
  • スコットランド独立を是非を問う二度目の住民投票の実施
  • 2045年までに温室ガス排出実質ゼロの目標を達成

2014年の住民投票でスコットランドの独立は否決されたものの、総選挙で議席を増やして以来、勢いのある政党です。

ロックダウン中には毎日スタージョン氏が会見を開いたり、コロナ対策をイングランドよりも早く導入するなどして、コロナ対策でイングランドとの差を出しています。

コロナ対策に関してはスコットランドはイングランドよりも上手くいっているようです。

だからこそ、独立を巡る二度目の住民投票の実施の声が高まっています。

住民投票の実施にはイギリス政府の許可が必要な為、ジョンソン氏が首相を務める限り実施される可能性は極めて低いのですが、独立支持派が優勢になっている今、SNPがこの勢いをコロナが収束した後どれくらい長く保つ事ができるのかに注目しです。

自由民主党(Liberal Democrats)

Liberal Democrats

党首:エッド・デイビー

政治的思想:自由主義、親欧州主義

  • ブレグジットの中止(2019年総選挙での政策)
  • 2045年までに温室ガス排出実質ゼロの目標を設定
  • 学校に年間100億ポンドを投資。新しく20,000人の教師を採用

第三党であり、保守党・労働党の批判票の受け皿として見られる場合もあります。

総選挙ではブレグジットのキャンセルを訴えたものの、あまり国民の支持を得ることはできませんでした。

また当時党首だったジョー・スウィンソンは落選してしまった為、選挙後に辞任しました。

新しい党首にエッド・デイビー氏が選ばれたものの、知名度は他の党首と比べ低いのが現状です。

親欧州主義の政党が、EU離脱後はどのような政策を訴えるのでしょうか。

ブレグジット党(Brexit Party)

ReformUK

党首:ナイジェル・ファラージ

政治的思想:ポピュリズム、欧州懐疑主義

  • EUからの早期離脱
  • ロックダウン反対

党首のナイジェル・ファラージはEU離脱を訴えた、欧州懐疑主義運動のパイオニア的存在です。

UKIP(イギリス独立党)の党首であったが、2年前に辞任します。

2019年にブレグジット党を結成し、5月に行われた欧州議会議員選挙では保守党・労働党を抜いて首位となりました。

EU離脱の日に近くなるにつれ党としての存在意義を見失ったと思いきや、党の名前を Reform UK に改め、ロックダウン措置に反対する立場を表明しました。

大人気ドラマの予言?合衆国憲法修正第12条

大人気ドラマの予言?合衆国憲法修正第12条

※本記事はドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のネタバレを含みます

2020年の大統領選はいよいよ佳境に入りました。今回の大統領選挙が異例なのは、11月3日の投票日の直後に結果がわからないかもしれないという指摘が各方面からあることです。
今回の選挙は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの郵便投票が見込まれています。その郵便投票の集計の混乱により、場合によっては法廷闘争に持ち込まれる懸念が高まっているのです。

ドラマでは・・・

2017年のNetflixドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」シーズン5でも大統領選挙の混乱が描かれていました。
この作品は、主人公の下院議員フランク・アンダーウッドが手段を選ばす大統領までのぼりつめていく政治ドラマで、オバマ前大統領安倍前首相もファンという、世界的人気作です。

シーズン5では、大統領選挙が描かれます。

主人公のフランク・アンダーウッド大統領(民主党)は、大統領選挙で共和党のイケメン候補コンウェイに負けそうになります。
そこで、フランクは、テロの脅威をでっちあげ、いくつかの州での11月の一般投票を中止に追い込んだのです。

大統領選挙の仕組みをおさらいすると、11月の投票日は一般国民が選挙人を選ぶ投票日にすぎません。
選ばれた538人の選挙人は12月の選挙人投票に臨み、そして、その選挙人投票で過半数の270票を得た者が大統領となります。
通常は、11月の投票日の直後に、どの候補がどのくらいの選挙人を獲得したかがわかるので、この時点で我々も次期大統領が誰なのかを知ることができます。

しかし、このドラマでは、テロでっちあげにより選挙人を選べない州が出てしまいました。つまり、12月の選挙人投票までに選挙人が決まらない事態になったわけです。当然、誰も過半数の270票を得ることができません

そこで、このドラマでは、まず合衆国憲法修正第12条が適用されます。

修正12条にこう書かれています。

大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。過半数に達した者がいないときは、下院は直ちに無記名投票により、大統領としての得票者一覧表の中の3 名を超えない上位得票者の中から、大統領を選出しなければならない。但し、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は1票を投じるものとする。この目的のための定足数は、全州の3分の2の州から1名または2名以上の議員が出席することを要し、大統領は全州の過半数をもって選出されるものとする。

つまり、選挙人投票で誰も過半数を得られなかった場合は、各州1票の下院投票が行われるのです。

そこで、フランクは下院投票に臨むのですが、どうやら下院投票でも負けそうなので、なんだかんだあって、違う方法で再選されることになりますが、そこはドラマはご視聴くださいということで割愛させていただきます。

郵便投票による混乱

さて、ここまではドラマの話なのですが、今回の大統領選挙では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う郵便投票の増加、そして、その郵便投票の集計をめぐる混乱が予想されています。場合によっては、法廷闘争に持ち込まれる可能性も十分にあります。

もちろん、法廷闘争が選挙人投票までに決着がつく可能性もあれば、各州の州議会が独自に選挙人を選ぶ可能性もあります。その場合は、12月の選挙人投票で、270票を獲得した候補が大統領になります。

しかし、12月の選挙人投票までに選挙人が選ばれなければ、修正12条の出番です。

2000年の大統領選挙に伴う裁判では、12月12日に連邦最高裁が判決を言い渡し、翌12月13日に民主党のゴア候補による敗北宣言が行われたことにより、選挙人をめぐる争いに決着がつきました。12月18日に行われる選挙人投票のわずか5日前の決着でした。

今回の大統領選の選挙人投票は、2020年12月14日です。もし、この日までに法廷闘争の決着がつかなければ、下院の出番となります。

もし、今回、修正12条に伴う下院投票が行われるとしたら、どうなるのでしょうか。実際に下院投票を行うのは、11月に選ばれる新しい下院議員たちですが、とりあえず現在の下院の情勢をもとで確認してみましょう。
現在の下院は、民主党が232議席共和党が198議席です。普通に考えれば、バイデン候補が勝ちそうですが、修正12条をもう一度見てみましょう。

「但し、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は1票を投じるものとする。」

各州1票なのです。人口が多かろうと少なかろうと、1票です。
例えば、カリフォルニア州は4000万人以上の人口を抱え下院議員を52人送り込んでいます。そのうち、45人が民主党で7人が共和党なので、バイデン候補に1票入るでしょう。一方で、アラスカ州は人口70万人ほどで、下院議員を1人送り込んでいます。その1人は、共和党員なので、トランプ候補に1票入ることになるでしょう。

このような、各州1票のシミュレーションでは、共和党が26対22で過半数を得ているそうです。(注1)なので、もし今回の大統領選とともに行われる下院選が現在と同じような結果になれば、トランプ候補が下院投票で大統領に選ばれる可能性は大いにあるのです。

最後に

当然、このような混乱は、さらなる分断、場合によっては流血をもたらす恐れがあります。ハウス・オブ・カードのような大混乱は、ドラマの中だけで楽しみたいものです。
大きな混乱なく、平和的に次期大統領が選ばれることを強く願います。

https://atomic-temporary-151149301.wpcomstaging.com/2020/09/23/primeminister/

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【大阪都構想に迫る】第2回 そもそも「都」とは何か(By るた)

【大阪都構想に迫る】 第2回 そもそも「都」とは何か

賛成派、反対派の見解の相違

いわゆる「大阪都構想」の住民投票の結果がまもなく出る。

この連載は、少し政局的な話とは距離を置いて、根本的な2つの論点について検証する企画だ。
前回は、「区」とは何か、を検証した。

今回はもう一つの論点、「都」とは何か、について考えていきたい。

この住民投票の正式名称は大阪市廃止・特別区設置住民投票というが、主に賛成派は「大阪都構想」というフレーズを多用し、反対派は「大阪市廃止~」という住民投票の名称を強調することが多い。

すなわち、賛成派にとってこの住民投票はいわゆる「大阪都」を実現するための手段だといい、反対派は「大阪都」などできず、「大阪市廃止」こそ住民投票の焦点であるという。

ここにそもそも、見解の相違がみられる。

この住民投票で「賛成」が過半数となれば、「大阪『都』」が成立するのか、という点である。

賛成派は、道府県が大都市地域に特別区を設置する際の諸手続きについて定めた法律である大都市地域特別区設置法の第10条に、「特別区を包括する道府県は、地方自治法その他の法令の規定の適用については、(中略)都とみなす」とあることを根拠に、大阪府は「都」になる、と主張する。

反対派は、都道府県の名称の変更について定めた地方自治法第3条第2項に「都道府県の名称を変更しようとするときは、法律でこれを定める」と規定されており、大阪府が名称を変更する法律は成立していないことから、大阪府は「都」にはならない、と主張する。

この見解はいずれも正しい。
というのも、ここで賛成派と反対派が指す「大阪『都』」が、そもそも別物だからだ。

賛成派がいう大阪「都」とは、法令の適用上の意味において「都」となることを指しており、反対派がいう大阪「都」にはならないとは、呼称上の意味において「都」とならないことを指している。

さて、「区」に続いて厄介な話である。

そもそも法令上の「都」とは何か、呼称上の「都」とは何か。

このあたりを改めて紐解いていく必要がある。そのために、都区制度の元祖である東京の都制成立の歴史にフォーカスして、今回の住民投票における「都」をめぐる論点について考えていきたい。

法令上の「都」

「都」の定義は?

さて、元も子もないことを言うようだが、地方自治法において「都」の定義は存在しない

ただし現在のところ東京都にしか存在しない特別区についての規定を参照すると、「都の区は、これを特別区という」(同法第281条)とある。

このことから逆説的に、特別区の存在する道府県が法令上は「都」である、と解釈することができる。
しかしあまり満足のいく説明ではない。

そこで、東京に都制が成立するまでの経緯を確認し、それが道府県といかなる相違をもった制度として検討されてきたのかを見ていくことにしたい。

東京の行政史

前稿で触れた通り、東京府と東京市が合併する形で東京都が誕生したのは、太平洋戦争が激化し、その戦局が切迫する1943年のことである。

このとき東京都制の目的は以下の通りである。

・帝都たる東京に真の国家的性格に適応する体制を整備確立すること
・帝都に於ける従来の府市併存の弊を解消し、帝都一般行政の、一元的にして強力な遂行を期すること
・「帝都行政の根本的刷新と高度の効率化を図ること

しかし、その実質的な理由は戦争遂行の効率化であった。

さて、そんな戦時法制の一環たる東京都制は、このとき突然提案されたものではない。

東京に特別な制度をしこうという問題は、明治いらい実に約50年にわたって検討されてきたことで、政府の行政能率化の要請に対し、東京市の側が民主的自治を要求する構図の中で、長きにわたって紛糾し続けた。

双方の主張は時代によって微妙に変化があるが、要旨はこうだ。

すなわち、東京市は東京府の管轄外とし、公選の市長を置くという「東京市制案」を、政府の側は東京市ないし東京府の区域をもって東京都を設置し、官選の都長を置くという東京都制案を掲げてきた。

多くの場合、東京市の主張は衆議院に、政府の主張は貴族院にそれぞれ議員提出法案として審議にかけられ、ことごとく審議未了に終わっている。

大正に入り衆議院は「東京市制案」を捨てて「帝都制案」を掲げるようになったことから、名称上の相違はなくなるが、それでも官治か自治かをめぐった東京市=衆議院ラインと政府=貴族院ラインの対立は続いていくことになる。

昭和に入ると政府は地方行政の刷新を狙い、各種の審議会・調査会を置くようになる。

そして1933年には、官治色の強い「東京都制案」を政府自ら提出し通過をはかろうとしている。
これに対する衆議院の批判は強く、やはり審議未了に終わっているが、その後、戦時体制に入ると、むしろ政治的摩擦を引き起こす問題だとして、議論が避けられてきた。

しかし1943年の第81議会は決戦議会と称され、重点産業の生産力を拡充するための権限を総理大臣の手に集中できることを定める「戦時行政特例法案」「戦時行政職権特例案」や、言論の徹底的取締を目指した「戦時刑事特別法」の改正案と併せて東京都制案が審議された。

ゆえに、政府は「都制案」に反対する新聞記事を禁じ、会合や東京市会などの意見書や決議文の提出に干渉するなどして、強行をはかったことは言うまでもない。

緊迫する戦局の中では衆議院も抗うことができず、ついに「都制案」が成立をみたのだ。

こうして歴史を顧みれば、結局のところ、東京の都制が他の道府県と異なる制度として成立している背景には、戦時体制に伴う行政の効率化があり、そこには長年にわたって東京市が反発し続けた官からの干渉の強い内容を戦時体制にかこつけて強行したという事実がある。

そうしたあり方は戦後の地方自治法においても受け継がれ、東京都の特別区は市町村より著しく権限の小さい団体として成立した。

つまり都をめぐる自治は道府県より制限された所から始まっているというのが歴史の語る事実であり、だからこそ都に存在する特別区は、戦後の長きにわたって自治獲得に奔走してきたのだ。

呼称上の「都」

このようにして実現された東京の都制であるが、それではそこに込められた「都」にはいかなる意味があるのだろうか。

上述した通り、都制は明治の頃から検討されてきた課題だったが、それが結実したのは太平洋戦争の最中だった。

それまで「都」とは「国都」や「帝都」という意味で用いられていたが、戦時中における「都」の成立は、八紘一宇、すなわち全世界を天皇制が中心となるひとつの世界にする、という思想を背景とした「皇都」としての性格を帯びることになった。

『東京百年史』(1974)では、こうした「都」をめぐる文化人の言説を追うことによって「都」の意味をつかもうとする試みがによって行われているので、ここではその検証に沿って「都」への考え方を探っていきたい。

大正から昭和初期にかけての文献においては、東京を表す抽象名詞には「国都」や「帝都」があてられる。

そこに込められる意味合いは
「明治元年七月十七日(中略)大詔下りて、江戸は東京と改称せられ、(中略)翌年帝都を此処に奠め(さだめ)給い、東京は統治の発源地となれり」(『東京市政概要』)だとか「地域が拡がり市民が殖えたばかりが決して大東京ではない。大東京には別に大東京としての意義がなくてはならない。大日本の首府として、又大日本の国都として、そこに格段の意義が蔵せられている。全日本の看板であり、精神であり、生命であり、対象である。」(『大東京』)
というように、本邦における政治・経済・文化の中枢的大都市であることが含意されている。

時代が下り、準戦時段階にはいると、さらに中央集権的国家体制の強化策の一環としての「掛まくも畏き帝皇が此処に天が下知ろし食す大宮所」(喜田貞吉)である「皇都」が用いられるようになり、1943年の都制成立段階に至ると、その「皇都」の意味合いが、日本列島を超えた中央権力の思想支配の中心としての役割へと変容していく。

「呼びなれた東京市が本年(1943年)7月から東京都と呼ばれるやうになった。慣れないうちは耳障りで言ひにくく、聞きづらかったが今となると、東京市などと聞くとどうも地方都市のやうで米英を相手に戦う日本の首都としては如何にも規模が少さく、みすぼらしい感じだ。(中略)これまでは日本の東京でよかった。

しかし現在はさうは行かぬ。大東亜の盟主日本の首都であれば即ち大東亜の東京でなければならない。」(『都の歴史と文化』)という具合である。

また「都の国体的意義」という一文によれば、日本の古語の都(みやこ)という言葉は、英語のシチー(city)や漢語の都会、都市という言葉とは意味が違い「宮処」であって、天皇の宮居(皇居)があるとし、「大東亜が八紘為宇の世界となるためには、まずその中心地たる東京都が名実兼ね具えた真の都になければならぬ。東京都制施行の第一義はここにある」(前掲書)とし、都制の成立は「神によって与えられた光栄」とさえ言う。

こうした記述から、都制成立期における「都」には、単に政治的・文化的中枢であるというだけでなく、「皇都」すなわち八紘一宇の思想を背景とした、何か精神的な、あるいは神がかり的な意味合いが含まれていることが分かる。

「都」が持つ意味合い

このように見ていくと、法令上の「都」とは、戦時が要請した大都市行政の効率化に端を発するもので、その背景には、より上位のアクター(=政府)による大都市資源へのアクセスの要求があった。

また呼称上の「都」には、戦争遂行のため皇都という精神的、あるいは神がかり的な意味合いを付与することによって世界征服を正当化しようとする思想が背景にあった。

こうしたことを総合すると、「都」は大都市行政を効率化して戦争遂行に資するための道具として導入され、その名目に「皇都」なる神がかり的な意味合いが付与されることによって正当化された、という考え方が成り立つ。

そうしたことを踏まえたときに、大阪が「都」を名乗ることの意味合いがどこにあるのか、何が隠されているのか、それとも隠されていないのか。

こうした見極めが、大阪の帰趨を決めることになると言っても過言ではない。

  • 古井喜実(1943)「東京都制について(一)」『国家学会雑誌』第57巻第9号
  • 東京都編(2013)『都史資料集成II 第1巻 東京都制の成立』東京都
  • 都政20年史編さん委員会編(1965)『都民と都政の歩み : 東京20年』東京都
  • 東京百年史編集委員会編(1972)『東京百年史〈第5巻〉復興から壊滅への東京(昭和期戦前)』東京都

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【熊谷千葉県知事誕生!?】鈴木大地氏不出馬で揺れる千葉県知事選

鈴木大地氏不出馬で様相一転

本記事は「【熊谷vs鈴木】これで丸わかり!千葉県知事選挙(By うの)」の続きです。

https://atomic-temporary-151149301.wpcomstaging.com/2020/09/26/chibakentiji/

鈴木大地氏の不出馬表明

自民党千葉県連は前向きに千葉県知事に鈴木大地氏を擁立させようと考えていたが、10月28日に様相は一変した。10月28日、地方紙・千葉日報が「鈴木大地氏、擁立困難 自民、森喜朗氏が反対 国会議員あす協議「候補探す場に」【’21千葉知事選】」という記事を出す。以下、記事の一部を引用する。

来年春の千葉県知事選を巡り、森田健作知事(70)の4期目不出馬を前提に、自民党県連が擁立を進めてきた鈴木大地前スポーツ庁長官(53)=習志野市出身=の出馬が、ここにきて困難な状況になったことが28日、関係者への取材で分かった。県連幹部の1人は、30日に県連所属の国会議員団再協議を予定通り実施すると強調した一方で「みんなで一緒に候補者を探していこうと確認する場だ」と説明。鈴木氏擁立の組織決定を目指すとしてきた従来の説明を軌道修正した。

東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相が28日、自民県連会長の渡辺博道衆院議員と東京都内で会い、知事選を巡り意見交換。関係者によると、>森氏は、自民県連が擁立を調整する鈴木氏の出馬に反対する考えを伝えた。

森氏はスポーツ界に大きな影響力を持つ。森氏の反対で、自民県連が目指した鈴木氏の擁立は困難な情勢になった。森氏は会談で、スポーツ庁を重視する立場を説明し、長官を退任したばかりの鈴木氏が保守分裂の可能性がある千葉県知事選に巻き込まれることに懸念を示した。森氏は鈴木氏とも面会した。

関係者によると、森氏は鈴木氏が長官時代から関係が深い。自民県連の一部国会議員らが鈴木氏擁立に異論を唱える中、熊谷氏を推す動きも出て、事実上の分裂選挙になる恐れを懸念したとみられる。

10月28日以前は鈴木大地氏も千葉県知事に意欲的であったし、森元首相も始めは賛成であった。しかしながら森元首相の突然の反対。結果として、鈴木大地氏の擁立は困難な事態となってしまった。

熊谷支持を打ち出す石井準一氏

千葉県選出の石井準一参議院議員は一貫して千葉市長・熊谷俊人氏を県知事に推したい考えを示していた。10月14日に自民党本部で開かれた国会議員団会議では「経験値が高く、発信力もある」と熊谷氏に対して言及し、同日の夜に熊谷氏や県内の首長と会合を開き、その関係の近さを見せた。

石井準一氏は千葉県議への影響も強く、2019年に行われた統一地方選では多くの地方議員候補の応援に訪れ、地方議員からの信頼も厚い。自民党千葉県議団の中では”石井派”と呼ばれる派閥が存在しており、国政政党ほどの結束を持つ派閥でないにしろ、県議会においては自派閥を持つほどだ。

楽々余裕?千葉市長・熊谷俊人氏

保守分裂と噂された千葉県知事選挙だが、それどころか、鈴木大地氏を擁立できない結果となってしまった。熊谷氏は旧民主党出身で、熊谷市長就任当時は民主党旋風が巻き起こっていた。先代・鶴岡市長は収賄容疑で逮捕も相まって、千葉市内では民主党への期待が高かった。市長就任後は党派を超えて支持を広げている。前回2017年の千葉市長選では公明党県本部が支持し、自民党は独自候補を立てることが出来なかった。

熊谷氏の発信力はとても強く、市議会・県議会議員から「ブログ・Twitterの発信力はものすごいよね」と語られるほどだ。熊谷市長のTwitterを覗いてみると、市内外を問わず、県外にも”ファン”が多数いる。熊谷氏は全国最年少市長として就任したこともあるが、彼の実績についても見ていきたい。

[box05 title=”実績”]

・市債残高を8年間で600億円以上削減。将来負担比率を306.4%から208.7%へ減少させ、政令市ワースト1位を脱却。

・保育所の入所児童数を約5,000人増加させ、2014年~2015年度には、首都圏政令市で初めての2年連続待機児童ゼロを達成。

・年平均2件程度だった企業誘致を2012年度から2015年度まで、それぞれ19件、25件、37件、35件と大幅に増加させ、1万人以上の雇用と年12.2億円以上の税収を創出。

・可燃ごみ有料化などにより焼却ごみ3分の1削減を達成し、大都市リサイクル率も6年連続でトップに。

[/box05]

しかしながら、当然批判的な目線もある。

[box05 title=”批判”]

・千葉市は稲毛海浜公園のリニューアル事業の一環でホワイトビーチを造った。整備事業費は約8億円、白い砂はオーストラリアから輸入したが、静岡県熱海市・熱海サンビーチは風で飛ばされづらい千葉県君津産の砂を選んだ。その結果、熱海サンビーチでは年間の訪問者数は40万人と「いなげの浜」の3倍以上。その後、台風の到来により砂が流されてしまったために改修へ。税金が無駄遣いされているのでは。

・モノレールの延伸計画中止を発表。熊谷氏は「費用便益比が大幅に低下するため中止と判断した」と説明した。地図上でモノレールの路線を見ると、千葉都市モノレールでありながら、モノレールの恩恵を受ける人は限られ、路線の短さを感じさせられる。千葉市のモノレールは懸垂型で、その特殊な形状から点検・改修にもコストがかかる。市民からは「千葉大病院に延伸する計画があったはずだ、福祉に繋がるし、利用者も確保できたはず。なぜ中止したんだ。」と疑問を呈された。

・愛知県で校外学習後に児童が熱中症で亡くなった事故が起こったことを機に、全国で小中学校の熱中症についての関心が高まった際、千葉市の普通教室のエアコン設置率は0パーセントであることがわかり炎上した。つけない理由は、老朽化の校舎の改修が優先で、予算がないためと説明であったが、近隣の、市川市、船橋市、等はエアコン設置率100%であった。市長の子息が私立学校に通っている事も相まって、非難が殺到した。現在は設置する方向で進んでいる。

・千葉市は中央区、美浜区、花見川区、稲毛区、若葉区、緑区の6つの区で構成されている。都心側である花見川区・美浜区の投資がなされているが、反対に若葉区や緑区はなかなか開発が進まない。10年くらい街の景色が変わっていないという状態が続いているのではないか、自分の地盤に投資が行われているのではないか、という批判がある。

また、他にも批判があるので引用し記載しておく。

[/box05]

なぜ鈴木大地氏は不出馬となってしまったのか

森元首相は政界、前述のようにスポーツ界に大きな影響力を持つ。森元首相の鶴の一声で知事選出馬困難になってしまった様子から見て、鈴木大地氏も森元首相には頭が上がらないのだろう。朝日新聞の取材で、森氏は「(分裂選挙で)泥沼になるに決まっている。そんなところに大地君を放り込んだら、無残なことになると思った」と語った。

スポーツ庁長官を4年間務めた経験は、千葉市長3期目になる熊谷氏と比べると劣ってしまう。加えて、鈴木大地氏は政治家ではないという批判があった。確かに、鈴木大地氏は議員ではないし、政治的な手腕の部分では懸念があった。森会長によると、馳浩衆院議員が鈴木氏に「当選したとして、県議会とやり合えるのか」と質問すると不安げな回答が返ってきたという。

森田健作知事は鈴木大地氏の不出馬に「驚いた」と語った。森田県政に批判的な態度をとってきたのは熊谷氏への対抗馬のために立てた鈴木大地氏が不出馬となっては大変残念だろう。鈴木大地氏はスポーツ庁長官を退任後、順天堂大学に特任教授として迎えられることが決まっていたこともあり、出馬を取り下げるという決断が出来たのかもしれない。

さいごに

旧民主党出身の熊谷氏ではあるが、リベラル側から猛烈な支持を受けているかといえば、そういうわけでもない。自民党の千葉県議会議員らも歓迎ムードでは全くない。ある石井派の県議は「鈴木大地でいくんじゃないの。分からないけど、県連で推すなら俺はそっち(鈴木大地)を推す。」と語っていた。石井派であっても熊谷氏を支持しているかはまた別問題だ。

これから自民党は新たに擁立する事態になるのか、もしくは、なし崩し的に熊谷氏を事実上応援する形になるのか、今後の状況を静観していきたい。

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教育実習で見た「若者」と「政治」の現在地(By Keita)

教育実習で見た「若者」と「政治」

私事ですが先日、公立高校に教育実習に行ってきました。

私の免許は地理・歴史科と公民科なので、実習校では現代社会を教えました。担当した部分は「地方自治」と「選挙制度」!

今回は教育実習で見た、若者の政治や時事問題に対しての関心についてお話ししたいと思います。

地方自治から見えた「若者」と「政治」

まず、私の教えた地方自治の部分では、住民自治に基づいて認められている権利として、「イニシアティブ(住民発案)」「リコール(解職請求)」「レファレンダム(住民投票)」の3つが重要語句として出てきます。

そして、実習先の学校の現代社会の授業では、毎授業、最初に最近見た気になるニュースを発表することになっています。現代社会という教科は、教科書で学んでいることが、まさに今現在進行形で、実際の現実で起こっており、生徒自身の生活と切り離すことのできない教科だと私は思っています。

前置きが長くなりましたが、レファレンダム(住民投票)という語句が出てきた際、ニュースのチェックを課題にしていることもあり、私はひとつの質問を生徒にしました。

「現在(10月15日)、日本でレファレンダム(住民投票)が行われているのを知っている人?」

高校1、2年生、計6クラスでこの質問をしましたが、答えられた生徒は1人だけ。
「大阪都構想という言葉を知っている人?」
と質問を変えても、手を挙げた生徒は10人もいませんでした。

これが現在の「若者」と「政治」の間にある距離です。

もちろん、分かっていたけれど手を挙げなかった生徒もいると思いますし、15~17歳の生徒なので選挙権はありません。しかし、この240分の1(40人学級×6)という数字が、現在の若者、高校生の政治や社会への関心度なのです。(学校の学力レベルは偏差値50よりやや上の中堅校です。)

「若者」と「政治」の間にあるもの

ではなぜ、毎日ニュースで取り上げられている「大阪都構想」という政治的キーワードを大多数の生徒は知らなかったのでしょうか?「若者」と「政治」の間にあるものはなんなのでしょうか?

9月、N高等学校が設立したN高政治部の授業に登壇した麻生太郎副総理は、「若者が政治に関心がないことは、悪いことではない」、「それだけ日本で平和に暮らしているということだ」として、自らが政情不安のアフリカにすんでいた経験から、アフガニスタンなど戦闘が続き、命の危険がある中では政治に関心を持たざるを得ない、政治を気にしなくても安心して暮らしていけるという意味では「政治に関心が無くても平和に生きられる国にいる方がよっぽど良い」述べました。

つまり、関係がないから関心がないのです。

もっと言うと、関係があることを知らないから関心がないのです。

例えば、学校の周りの道が狭くて危ない、また街灯がないので夜になると暗くて危ない。
駅前に勉強する場所が少ないなど、若者の身近にも問題はあるはずです。
しかし、それを政治によって変えられることを知らない、これで仕方がないと受容してしまっているのです。

「若者」と「政治」を近づけるために行われていること

現在、主権者教育として、「私たちが拓く日本の未来」という、総務省と文部科学省が作成した副教材が全国すべての高校生に配布されています。

しかし、私たちと政治がどのように関係しているかの記述は少なく、選挙や政治の仕組みの解説がほとんどであることもさることながら、「フリガナ」がないのです。

選挙には4つの原則があります。そのうちの1つが財産や性別に関係なく選挙権が与えられる「普通選挙」という原則であり、もう1つが人種、性別、社会的身分、門地、教育などによって差別してはならず、一人一票を平等に扱うという「平等選挙」という原則です。つまり、勉強が得意でない生徒も、もちろん主権者なり、この副教材を使うのです。かなり細かく初歩的なところですが、主権者を育てるうえで、いかがなものかと思います。

最後に

私はこの現状に非常に驚いたとともに、危機感を覚えました

「大阪都構想」という言葉の内容は知らなくても言葉くらいは知っているものだと思っていました。

若者の政治参画を促す。これは私たちpolicyが目指していることです。

同じ若者である私たちが、政治の記事を届けることで、政治を身近に感じてもらい、若者の政治参画を促す。自分たちが生きる未来の社会は自分たちで創る。

「若者」と「政治」の距離を少しでも近づけられるよう、アクションを起こしていきたいと、今回強く思いました。

注記)地方公務員法36条および教育公務員特例法18条、公職選挙法第137条を順守し授業を行っております。また、大阪都構想は最新図説現社(浜島書店)にも記載されています。

https://atomic-temporary-151149301.wpcomstaging.com/2020/09/16/makeschool/

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米中新冷戦〜習近平主席の思惑~

米中新冷戦〜習近平主席の思惑〜

さて、随分と期間が空いてしまいましたが、前回記事の続きということで米中新冷戦を紐解いていきます。

新型コロナが全てをひっくり返した

しかし、トランプ大統領は2020年1月に湖北省武漢市で新型コロナウイルスが発生、感染爆発を起こすと「武漢ウイルス」などと連呼、更に中国への圧力を強めた。

こうしたトランプ大統領の強硬姿勢を見て中国はアメリカの顔色を伺うのを止め、時に強い言葉で反論し始めた。
トランプ大統領としては中国に圧力を加えていることを自国民にアピールすることで、自らの再選に役立てようという狙いがあったと思われる。しかし、逆に中国が強硬姿勢に転じてしまったため、難しい外交戦略を強いられることになってしまった

本気になった中国

一方で、アメリカの批判は中国政府と中国国民には内政干渉と映る。中国中央テレビ環球時報などの政府系メディアは、過去にアメリカが大量破壊兵器の証拠もないのに一方的にイラクやリビアに戦争を仕掛けたことなどを例に挙げて、自己中心的なのはアメリカであり、アメリカこそが覇権主義である、と論じている。

こうした背景もあり、政府関係者のみならず一般の中国人、特に「00世代」と呼ばれる、中国が急速に経済発展を遂げた2000年代以降に生まれた青少年の間で「アメリカの傍若無人な他国への介入には徹底的に対抗する」といった考えが広がっている。
例えば香港問題をめぐっても、「一国ニ制度下の香港でアメリカに内政干渉させないためにも警察、公安機関の対策強化が必要だ」と考える人は僕がリアルに付き合っている在日中国人の中でも多い。

習近平国家主席が掲げる「強国路線」は一定の支持を受けている。

コロナ抑え込みが自信に

また、外から見ると民衆を抑圧しているだけのように見える中国共産党だが、国民から一定の支持を受けている。急速な経済の発展や生活の向上などを受け、少なくない中国人(前述したように特に青少年代)が自国に対するプライドを感じ一党独裁に一定の正当性を与えている面がある。

特に新型コロナウイルス対策では、アメリカやヨーロッパ諸国などの主要先進国がパニック状態に陥っているのに対し、中国では現在、抑え込みに成功している。メディアや政府などによる宣伝効果もあって「中国の社会体制は西洋の社会体制に比べ優れた面もある」との受け止めが広がっている。

もっと慎重に、国内からの懸念

しかし、このような中国政府の強気の外交手腕に異論も出始めている。中国人民大学教授で、政府のアドバイザーを務める時殷弘(じ・いんこう)氏は、中国メディアの取材に対し「マイナスの相互過程を激化させてしまい、しかもアメリカの過激な反中タカ派に弾薬を与えてしまった」と対中圧力を強めてしまったと懸念を示している。

また、アメリカ以外の国との摩擦が強まっていることについても「我々は視線を全世界に向けなければならない。時々は耐え忍ぶことも出来ないだろうか。もし我々が敵を多く作りすぎれば非常に不利になる。我々は忍耐力と必要な謙虚な態度を持たなければならない」
「中国の能力には限界があることを認識しなければならない」
とも述べていて、中国の国際社会での孤立に警鐘を鳴らしている。

最後に

前回記事よりも中立的な立場で執筆したつもりですが、いかがでしょうか?

この米中新冷戦の最も興味深い点は、中国とアメリカの双方共に、経済的、軍事的な面で世界的に強い点です。

90〜80年代にアメリカと対立したソ連は軍事的には強力でしたけれども、経済的には社会主義国であり弱く、最終的には崩壊を迎えます。

貿易摩擦で同じく、アメリカと対立した高度経済成長期の日本は経済的にはアメリカに負けず劣らずでしたが、軍事的には米軍に頼りきりで、結局アメリカに屈しました。

この2カ国の長所を併せ持つ国、中華人民共和国はアメリカに勝ち、21世紀の新たな覇権国になるのか? それとも「世界の警察」、アメリカ合衆国に負けるのか?

今後、米中関係に要注目です!

https://timetankcom.wordpress.com/2020/09/14/china-america/

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大阪都構想は本当に必要なのか

大阪都構想の懸念点を振り返る

はじめに

大阪都構想の是非を問う住民投票が告示され、11月1日に投開票される

大阪都構想とは簡単に説明すると、大阪市を廃止し四つの特別区に分割再編するというものだ

大阪市の広い範囲の権限・予算 を大阪府に吸い上げて大阪府に一元化しようという狙いがある。

住民投票を主導してきた維新は都構想が実現すれば主に「二重行政の解消」「広域機能の一元化による大阪の成長促進」「住民サービスの充実」ができるという効果があるとしている。

本当にそうなのか。調べてみるとそうとも言えない実態が見えてきた。

莫大な経済効果は本当か?

大阪市作成の広報物には、年間1000億円のコストカットの達成とその分を投資に回すことで1.1兆円が特別区の設置による経済効果として期待できると記載されている。

これは大阪市より委託された学校法人嘉悦学園によって算出されたものだ。

この検証結果、実は実現可能性や学術的信憑性に欠けるとの指摘が絶えない。

安倍政権下で内閣参与を務めた京都大学大学院教授の藤井聡氏や立命館大学の松尾匡教授らによって2018年に発表されたレポートがある。

嘉悦学園の計算は「住民一人当たりの行政経費は、自治体の人口が小さすぎても大きすぎても高くなるが、それが最小となる自治体の人口サイズがある。」という先行研究を活かし、「分割して自治体の人口サイズを減らせば行政歳出額が減る。」との前提でされている。

しかしこの先行研究などでは大都市の行政出費が高くなる理由を「都市特有の出費があり、物価が高くかつ行政権限が広い」などとしており、これを踏まえると都構想を実現しても大阪が大都市である限り不可能だと言わざるを得ない。

単に自治体を小さいサイズに分割すれば歳出が削減されることはないのだ。

また同レポートではこれによって出た財政余力を投資資金に当てようとしていることから、嘉悦学園の報告書の「5000億円を社会資本整備に当てて10年で1兆円を超える経済効果を得られる。」という部分についても、投資効果が成り立つことを否定している。

これを見る限り「都構想で経済効果」という図式は成り立ちにくい

特別区の財政にも不安が

都構想では「憲法上の地方公共団体」である市が廃止されることで、市が持っていた巨大な自主財源と河川、公園、上水道や公共下水道の整備や運営、都市計画の決定などの権限は特別区ではなく府に譲り渡されることになっているわけだが、特別区の財政は大阪メトロの税収や配当金にという構図になっている。

その状況でも基本的に都構想の改革効果もあわさり特別区の収支は黒字とされてきたが、法定協議会などではこれはコロナ以前の景気での試算であり、コロナの打撃を受けた影響を反映すると「赤字」になると指摘されている。

財政上の不安が「ない」とは言えないのだ。

巨大な一部事務組合の発生と特別区の利害対立のリスク

都構想が実現すると大阪市が担ってきた行政サービスは、特別区の他に「一部事務組合」という特別地方公共団体が担うことになる。

「一部事務組合」とはもともと単独で処理するのは負担の大きい事業(例えば消防や水道事業やゴミ処理)を複数の自治体の協同で行うための組織で、大阪都構想では四つの特別区に割り切れなかった151の事業を対象にした巨大な一部事務組合が作られることが想定されている。

この一部事務組合、複数の自治体で運営や意思決定を行うため非効率になりやすいうえに、自治体間の規模や財政状況で対立が起きる可能性がある。

都構想の場合、住宅街メインの天王寺区と比較的財政に余裕のある北区の格差が指摘されている。一部事務組合だけではなく、財政調整の面でも一たび対立が起きれば深刻な業務停滞につながりかねない。

また一部事務組合には「一部事務組合議会」という各自治体議会からの代表者で構成される機関があるが数年で交代する上に年数回の開催のため、十分なチェック機能を持たせるが難しい。

二重行政の解消どころか下手をすれば現行より行政サービスが停滞したり、ムダが生まれる可能性がある。

気になる福祉サービスの行方

都構想の改革の中による財政試算では、スポーツセンター、老人福祉センター、子育てプラザといった施設の縮減が盛り込まれており、17億円を捻出するとしている。市民の健康生活を支える施設や高齢者や子育て世代の交流の場を減らすことは、市民生活にマイナスに働く。

特に子育てプラザは、在宅での子育てを行っている家庭や地域の子育て活動を支援するための施設であり、少子高齢化や共働き世帯へのサポートが叫ばれる中、拡充されるべき分野の施設ではないだろうか。

また介護保険事業が一部事務組合の業務に割り振られたことに対する批判も起きている。

介護保険事業という多様な事例と個別対応が必要とされるものが多い事業に関して議会が関与しづらくなるからだ。他の高齢者施策が府、特別区、一部事務組合、障がい者施策が特別区にバラバラの管轄になったこともあわせて柔軟な福祉サービスができなくなる懸念がある。

かつて維新政治には二重行政の解消として市民病院や保健所を縮減した結果、新型コロナ流行時に現場の多大な混乱を招いたという批判もある。

そのことも併せて考えて見ると福祉分野の事業を本来の目的ではなく、コストカットの対象として捉えている気がしてならない。

東京都の先行事例

すでに都区制度を敷いている東京都についても言及しておこう。

実は東京23区の区長で構成する特別区協議会は真逆の「都区制度の廃止」を提言している。

行政区に税源が少なく自治権を活かした行政サービスに限りがあり、財政調整のたびに特別区間でゴタゴタが起きているからだ。

さいごに

ここまで見てきて大阪都構想から皆さんには明日の大阪の明るい姿が見えただろうか。

残念ながらそこまでの説得力のあるようには私には思えない。

やはり住民の暮らしや自治を豊かにすることにはつながらないように思える。

いずれにせよ都構想がどうなるかは大阪だけではなく日本全体のグランドデザインを問題でもある。賛成・反対双方の主張を見比べて投票に行ってほしい。

https://atomic-temporary-151149301.wpcomstaging.com/2020/10/25/osakato-ku/

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