【Streetから愛をこめて】若者で作る音楽のニュージェネ
反政府、自由・独立の象徴、若者の心象投影、社会への問題提起。実は音楽って、めちゃくちゃ社会的なシロモノ。
尾崎豊の「15の夜」、ボブディランの反戦歌。最近だと、アジカンのN2(No Nukes=脱原発)など、社会に対してのアンチテーゼを考えたとき、音楽は無視できない存在。
そして何より、そのエネルギーの源は、若者にあります。
最近起こりつつある日本の音楽の潮流の変化。オールドファッションの再定義は、言い換えれば、時代の再定義ともいえるもの。
その変化の最前線に、シティポップという存在があります。
音楽文化を中心的に担っていく若い世代の方々に(勿論、音楽は全世代のものですが)、その良さを知ってほしい!
ということで、シティポップを紹介します。
そもそもシティポップって何?
シティポップは、70年代から80年代に流行したポップス。
「都会的」なムードを持つ曲に対して用いられた言葉で、明確なジャンルの定義はありません。ジャズやファンク、AORなどの音楽ジャンルをミックスし、日本独自にアレンジしたもの、とでも言えましょうか。
この点で70年代のフォークソングや民謡、時を同じくして80年代に流行していたギターロック等とは一線を画すジャンルでした。
音づくりの特徴としては、シンセ等を多用している点があります。歌詞世界の舞台は都会であることが多く、大人の恋愛等アダルトチックな楽曲も存在します。
逆輸入!?80’sのジャパニーズ・シティポップが海外でヒット
大滝詠一、山下達郎、南佳孝、細野晴臣、松任谷由美、大貫妙子、竹内まりや等、80年代はシティポップが隆盛を極めました。
しかし、時代が下るとともにそのブームは一旦は下火になり、いわゆる「J-POP」にとって代わられました。
ここで、突然のブーム再燃。2010年代後半に日本のシティポップの再評価が海外を中心に巻き起こります。
往年の日本のシティ・ポップが海外で人気を博し、日本に逆輸入されるという形に。
竹内まりやはその最たる例。本楽曲”Plastic Love”は発売当初、アルバム”VARIETY”に収録されるも、シングルカットはされていませんでした。
しかし2017年にYoutubeにて非公式にアップロードされた動画が海外を中心に異例のヒットを記録。元々海外ではJamiroquaiやMaroon 5、最近ではThe 1975などのポップスが人気であり、まさしく「再発見」された形です。
2400万回以上再生され、そのコラボやカバー動画なども多数作られました。
この流れに同調するように、日本でもシティポップ・リバイバルの流れが活発になりつつあります。
都会的な音楽が現代風に再アレンジされ、徐々にメジャーシーンに浸透しつつあります。早速見ていきましょう。
ニュー・シティポップ
1・Yogee New Waves
バンド名の由来はハリシ・マヘーシュ・ヨーギーから。四人組のバンド。Vo,G角舘健悟、B矢澤直紀を中心に結成。一曲目「Climax night」、熱帯夜の環七を、チャリで飛ばしながら聴きたい。
2・mabunua
mabanua=日本のプロデューサー、トラックメイカー、ドラマー、シンガー。レイ・ハラカミ、菅野よう子、七尾旅人、toeなどと共演。また、プロデューサーとして100曲以上の楽曲を手掛ける。シティポップといいつつ、壮大なランドスケープを感じさせる一曲目。飲みすぎた終電で聴いたら、そのまま落ちて、最寄りをすっ飛ばして終点まで行ってしまいそうだ。二曲目、気怠いシンセとブリッジミュートのギターの掛け合いが、小気味よい。
3・SIRUP
SIRUP=大阪出身のシンガーソングライターKYOtaroによるプロジェクト。R&B、ソウル、HIPHOP等ブラックミュージックを都会的に咀嚼。ソウルフル且つ変幻自在なボーカルが耳に心地よい。HONDA「VEZEL TOURING」のTVCMでもおなじみ。仲の良い友人を誘って首都高ドライブを敢行し、カーステレオで聴きたい。
4・WONK
wonk=2013年結成の4人組。エクスペリメンタル・ソウルバンド。ジャズやヒップホップ、ロックなどのジャンルが混然一体となったサウンドが特徴。一曲目”Cyberspace Love”はセロニアス・モンク生誕100周年記念アルバム「MONK’s Playhouse」収録。二曲目「Gather Round」はKing GnuのG.常田氏がMVを監督。なお、映像中で使用されたダルマは現在常田宅に引き取られているらしい。
5・DENIMS
DENIMS=大阪府堺市で結成の4人組バンド。2012年結成。「古い物好きだけど新しい事をしたい。大人だけど子供のように。お洒落だけど泥臭い。そんなバンド。」シティポップはシンセの登場率の高い音楽ジャンルではあるが、「fools」はギターのみであり、シンプルだ。しかし、空間をのこしたテンションコードのカッティングが、非常にマッチしている。
6・kiki vivi lily
kiki vivi lily=2015年8月、同名義で活動開始。HIP HOP、CLUB、R&B等を取り入れつつ、アーバンな楽曲を多数制作。”Blue in Green”はトラックメイカーとしてSHUKISHAがクレジット。ストッキングの80デニールって、調べたら、だいぶ分厚い。
7・TENDRE
TENDRE=河原太郎によるソロプロジェクト。ベース、ギター、鍵盤、サックスなどを演奏するマルチプレイヤー。
8・toconoma
toconoma=2008年結成のジャムインストバンド。ジャズ、ファンク、ラテン、ハウス、テクノ等の要素を取り込んだ楽曲が持ち味。Delorean、ストリート文化にも通ずるビビッドなMVも魅力だ。
9・Sun Rai
Sun Rai=サンフランシスコ、ではなくオーストラリア出身。San Francisco Streetは、そのまま、夜の高速道路で聴きたいような、メロウかつ直線的でシンプルな音作りが特徴だ。
10・Vaundy
Vaundy=作詞、作曲のみならず、アートワークや映像プロデュースも手掛ける。また、美術系大学に現役で通っている。「東京フラッシュ」「不可幸力」はシティポップとして取り上げたが、彼の持つ音楽的魅力はそこだけではない。ずばり、作風の振れ幅の大きさだ。「怪獣の花唄」では一転して、王道邦ロックを高らかに奏でているし、「灯火」はアコースティックギターの音色を全面に押し出したスタイリッシュなダンスナンバーとなっている。しかし芯がブレるなどということは毛頭なく、彼の艶やかで力強いのに、繊細な歌声が貫いている点が、いささか末恐ろしい。
11・さとうもか
さとうもか=1994年、岡山県生まれ。3歳でピアノでをはじめ、以降、ギター、サックス、合唱、声楽などを経験。次世代のユーミンと称される。2018年3月には1stフルアルバム「Lukewarm」をリリース。2019年5月に2ndアルバム「Merry go round」をリリース。唯一無二で、耳から脳裏にこびりついて離れない感のあるボーカルと、シティ感の更に先の現代的な音像がマッチして、破壊力抜群である。
12・くるり
くるり=最早、説明不要。くるりは時期によってその音楽性が大きく変化することでも知られ、「東京」「ばらの花」の1期、「ワールズエンド・スーパーノヴァ」の2期、「ロックンロール」の3期、など、幾度となくメンバーチェンジを繰り返してきた。またVo.岸田が2007年にオーストリア・ウィーンでのレコーディングを敢行。クラシックとオーケストラへの造詣を深め、音楽性に更なる深化を加えるなど常に目が離せないバンドである。「琥珀色の街、上海蟹の朝」は、第8期の作品。上京した若者は、いつのまにか「上海ガニ食べたい」とシティポップを歌っていたという、不思議。
さいごに
YOASOBI「夜に駆ける」、米津玄師「感電」、星野源「pop virus」等、ヒットチャートに上る楽曲の傾向に新たな兆しが見え始めています。
そして、シティポップ的要素を盛り込んだ音楽は、今着実にリスナーの耳に届くようになってきています。
ヒットチャートに並ぶ音楽も素晴らしいですが、ちょっと寄り道をして、こういった音楽を聴いてみるのもまた一興。
あなただけのお気に入りの一曲を、見つける旅に出よう。