【緊急避妊薬を巡る法律改正へ】実体験から日本の「性意識」を考える

【緊急避妊薬を巡る法律改正】実体験から日本の「性意識」を考える

なんとか這いつくばってきた婦人科。頑張れ私。

渋谷の婦人科はまだ閉まっていた。
当然だ。平日の朝9時なんだから。
朝だというのに、沢山の同い年の女性がいた。

日本の「性知識」は充分なのか

10月7日、政府は緊急避妊薬について医師の処方箋がなくても薬局で購入できるようにする方針を固めた。2021年にも導入する予定だ。

このニュースは、SNS上で多くの女性から、賛成の声が見られた。

これまで署名活動を行ってきた人たちは、やっとの思いで掴み取ったもの。
まだ通過点ではあるけれど、性意識について男女で問うべき問題だと窓口を広げることができたと思う。

避妊薬が手が届く値段では、近場では、買えない。
欧州やアジアなど世界86カ国では、医師の診察なしで購入することができる中、日本は性意識で遅れを取っていることが分かる事実だ。

避妊薬をまだ薬局で買えない理由は、悪用・乱用を防ぐためなど言われているが、一番は性教育の不十分さがあると思う。

この法案を検討する世代の性知識は十分であろうか。
女性の立場に沿った考えができる人はどれほどいるだろうか。

性はどこかタブー視され、正しい知識を学校から学べなければいけないけれど不十分である。

誰にも言えない。どうすれば良いかわからない。
女性だけが背負う問題では決してない。

私は今年、緊急不妊薬を貰いに勇気を出して婦人科まで足を運んだ。
そのことを思い出せる範囲で振り返って見る。

実体験から「緊急避妊薬」を考える

まだ人通りが少ない時期の渋谷。
ぐちゃぐちゃの髪と崩れたメイクで泣きそうになっていた。
どこからどう見ても朝帰りの女だ。

帰りたい、帰りたいと思ったけど、嘘のような数時間前の記憶が、私を全力で婦人科に行くよう奮い立たせてきていた。

「あぁ…なんてことしちゃったんだろう…」

当時、彼氏もいなかった私は、コロナで久々の外出で完全に舞い上がっていた。いや、病んでいたんだと思う。
友達に誘われ、数人かの知らない人たちと、久々のお酒を楽しむ。カシオレ、ハイボール、テキーラ、ハイボール、ハイボール。ベロンベロンに楽しい気分でフラフラしていた。

そんな私を見かねたのか、12時過ぎ。バラバラと解散していく中で、私はさっき会ったばかりの男と気付いたらタクシーにいて、気付いたら、部屋にいた。いい雰囲気だったのか、自分でもわからないけど。でももう、いいやって思っていた。

それから気付けば朝になり、うっすらゴムつけてないなぁっと思った。
でも考えないようにしていた。
私は人生で初めて遊ぶという体験をし、どうすればいいか分からなかった。

これが、ほんと数時間前のわたしだ。
冷静になり、朝のマックでコーヒーを飲んでいた。なんとなく、パンツが不快な気がして、嫌な事を考えて、おもむろに検索をし始めた。

「避妊 失敗」「妊娠確率」「渋谷 婦人科」

ある婦人科の緊急避妊薬はジェネリックを含めると3種類だ。
一番高く、効果の出るものは、一万円以上。そこから5千円、7千円で妊娠確率が費用により変わっている。学生にとっては高価だ。
もちろん「頭痛」「吐き気」など副作用もある。

数十分迷った。行かなくても大丈夫かもしれない。100%妊娠するわけじゃい。でも次、生理がこなかったら?中絶するときの費用は?

72時間以内に緊急避妊薬を服用すると、約8割の確率で妊娠を防げるらしい。
早いほど、効果はあがる。

かかるかもしれない1万円を捻出しなければいけない事が恨めしい。
せめてあの男にお金さえもらっておけば…最悪な事を考える。
そしてお金だけではない。
タイムリミットも迫っている事にさらに追い討ちをかける。

最初の行為から何時間だ。酔って記憶のない私は指を追って、何時間か考える。寝たい、家に帰って寝たいけど、寝たら死ぬ。

私は意を決して、婦人科に行く決意をした。
誰にも相談できずとにかく不安だった。

這いつくばってきた婦人科。
頑張れ自分。
渋谷の婦人科は、まだ閉まっていた。
当然だ。平日の朝なんだから。
でも朝だというのに、沢山の同い年の女性がいた。
「仲間だー!イェーイ!」
と心の中でハイタッチする気分ではなかった。
全員が目的一致で朝から婦人科に並んでいる訳ではないと思う。
でも、崩れた髪と眠そうな顔で並ぶ女性だけの列は、地獄の入り口かのような風景だった。

婦人科の前に10人以上の女性が並ぶこの現状に、絶望を感じた。
どんな背景があるか分からない。でもきっと婦人科にいる相応の理由があるのだ。

ガラガラガラ。
シャッターが開いて、受付をする。
何十分か待つ時間は、ここ最近で1番長く感じた。副作用、お金、時間、罪、馬鹿だなぁと思いながら怒りの矛先が自分だけになる事に気付いた。

「奴は、奴はなんも思ってないだろ..(いつの間にか奴呼ばわりしていた)」

なぜ女性だけがこんなに悩むのか。抱え込まなければいけないものなんだ。
もっと自分を大切にしないと!そう言われるのは分かってるけど、分かってるけど、、まるでドラマみたいな現象に哀れな自分。
漫画なら確実に、後ろの背景に白黒の縦線が入っていた。絶望。

名前が呼ばれ、医師に一連の出来事を話す。
幸い私は日常的にピル を服用していたことが功を奏し、「多分大丈夫だろう」と言われた。
急いで帰宅して、服用してくださいということだった。

今すぐ飲みたいという気持ちを抑え、泣きそうになりながら、深く頭を下げ、お礼を言った。

結果的に残ったのは、死ぬほど焦る時間とすり減った心だけだ。
バカみたいだった。バカで、バカで、死んでしまいたいと思った。

緊急避妊薬を薬局で

緊急避妊薬を薬局で買えるようにすること。
日本産婦人科医会は「女性の知識不足」を反対の理由にしている。

薬局に避妊薬を置くと、「悪用される」とか「若い女性は性知識がない」「次を防ぐにはどうするかの説明が必要だ」などと言われている。

でも、男性たちが中心となり慎重な意見を話し合っていく中で今もなお、絶望の淵にいる女性を忘れないでほしい。

そして男性が考えもしない所で、何倍もの重さを女性が背負っている事も考えてほしい。

この問題は女性だけの問題ではない。日本全体で性別を問わず性教育の低下が挙げられているのは事実だ。

しかし、環境を整える事を願っていては、先には進まない。今、生理がこないで悶々とする女性はたくさんいると思う。

私は本当にバカな事をした。
性の知識不足だから避妊をしてないのではない。

それでも、間違いを犯してしまう時がある。

緊急避妊薬を薬局に。

それだけで、死にたくなるような絶望から救われる人たちがいる。

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