キーワード解説:PKO
PKOは、世界の平和を守るための活動です。
日本も1992年にPKO協力法を制定し、国際的な活動を積極的に行ってきました。
近年は、安保法制や憲法9条との兼ね合いなど、新たな議論を呼んでいます。
キーワード解説:PKO(国際平和維持活動)
PKOとは
PKOの正式名称は国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations)です。
世界各地で起きている紛争の防止や紛争の対処をするため、紛争地域を監視、復興援助をする活動のことです。
東西冷戦中に多発した紛争を解決する目的で、紛争地帯に出向いて停戦合意を促し、当事者の復興をはじめとする経済援助をしてきました。
冷戦終結後は世界情勢が目まぐるしく変わり、対立構造も複雑化しました。
それに伴って国連PKOの役割も増えこれまでは国家間の紛争であったものが内戦の解決、これまで以上の人道支援等、多岐に渡ります。
日本におけるPKOの派遣事例
国際的な活動に協力するため、日本は1992年にPKO協力法を制定し自衛隊を派遣しています。
PKO協力法成立以降、日本は国連PKOの活動に自衛隊を13回派遣しています。
派遣期間 | 派遣先国 | 名称 |
1992年 | アンゴラ | アンゴラ国際平和協力業務 |
1992年~1993年 | カンボジア | カンボジア国際平和協力業務 |
1993年~1995年 | モザンビーク | モザンビーク国際平和協力業務 |
1994年 | エルサルバドル | エルサルバドル国際平和協力業務 |
1996年~2013年2月 | イスラエル、シリア、レバノン | ゴラン高原国際平和協力業務 |
1999年 | インドネシア | 東ティモール国際平和協力業務 |
2002年~2004年 | 東ティモール | 東ティモール国際平和協力業務 |
2007年 | 東ティモール | 東ティモール国際平和協力業務 |
2007年~2011年2月 | ネパール | ネパール国際平和協力業務 |
2008年~2011年9月 | スーダン | スーダン国際平和協力業務 |
2010年~2013年2月 | ハイチ | ハイチ国際平和協力業務 |
2010年~2012年9月 | 東ティモール | 東ティモール国際平和協力業務 |
2011年~2017年5月 | 南スーダン | 南スーダン国際平和協力業務 |
PKO協力法に基づき人員が初めて派遣されたのは、1992年9月のアンゴラ国際平和協力業務でした。
アンゴラで行われた国会議員選挙、大統領選挙が公正かつ円滑に進むよう、選挙を監視するための人員3名が派遣されました。
投票所の巡回、不正の防止を監視しました。
この派遣を皮切りに、日本は25年以上国際平和のために人員を派遣しているのです。
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南スーダン派遣にみるPKOの問題点
国際的な平和維持活動に努めるPKOですが、日本ではいくつかの問題点が議論されています。
憲法9条に反する可能性
日本は南スーダンへのPKO部隊を2011年から派遣していました。
この派遣が後に国内で議論を呼ぶものとなったのです。
南スーダンでは、2013年12月から大統領派と反大統領派の内戦が続いていました。
PKO部隊を統括するUNMISS(国連南スーダン派遣団)が南スーダン軍との戦闘となる可能性が浮上したのです。
南スーダンへ派遣される自衛隊はUNMISSの指揮下に入るため、南スーダンとの交戦、あるいは戦闘に巻き込まれる可能性があったのです。
憲法9条で日本は交戦権を否定しているため「これは憲法違反になるのではないか」という議論が巻き起こりました。
PKO協力法に抵触する可能性
日本は「PKO協力法の5原則」を定めています。
これは、国連PKOに派遣された日本人の現地での安全を確保するためのものです。
1,紛争当事者間で停戦合意がある
2,受入国と紛争当事者の同意がある
3,中立的立場を厳守する
4,以上のいずれかが満たされなくなった場合は即時撤収・撤退する
5,武器使用は要員の生命保護など必要最小限が基本である
2016年の戦闘では民間人も含めた死亡者が300人を超え、さらには中国軍から派遣されたPKO部隊にも死者が出ました。
これが5原則の1と4に抵触していると批判されています。
さらには、2015年7月に可決された安保法案と5原則の矛盾も物議を醸しました。
法案の可決によって可能になった「駆け付け警護」は中立的立場の維持を定めた5原則の3に反する恐れがあるとの批判が噴出したのです。
一方で、PKO協力法の制定から25年間で日本を取り巻く世界情勢が変わったことから「成立した安保法制に合わせたPKO協力法の改正が必要」との意見もあります。
PKOは世界の平和を守る存在
今回はPKO(国連平和維持活動)を紹介しました。
日本では問題点もたびたび取り上げられていますが、世界の平和を守るための活動です。
また、「日本のPKO協力法が時代にあったものなのか」という新たな議論もなされています。
派遣された日本人を守ること、同盟諸国との足並みを揃えること、これらを両立するための仕組みづくりは今後も話題となりそうです。