三国志解説シリーズ:曹操の悪行
今回は趣向を変えて、時代を超えて愛される史実に基づいた大人気大河ドラマ・三国志を解説していきます。
第一回は、三国時代の仕掛け役・魏の王曹操の魅力を紹介していきます。
曹操のプロフィール

出生 | 永寿元年(155年) 豫州沛国譙県(現在の安徽省亳州市譙城区) |
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死去 | 建安25年1月23日(220年3月15日) 豫州河南郡洛陽(現在の河南省洛陽市) |
拼音 | Cáo Cāo(ツァオ・ツァオ) |
字 | 孟徳 |
諡号 | 武王→武皇帝 |
廟号 | 太祖 |
別名 | 幼名:阿瞞、吉利 |
主君 | 霊帝→少帝弁→献帝 |
参照:陳 舜臣「曹操」
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曹操は悪なのか
三国時代を語る上で欠かせない問題で、曹操に対する解釈です。
曹操の実像と虚像
というのも、曹操は三国時代直後の晋の時代に記された正史「三国志」と、その後の明の時代に描かれた小説「三国志演義」で大きく描かれ方が異なっているからです。
正史「三国志」では、当然事実と判断された事しか描かれていませんが、「三国志演義」はあくまで小説であり、様々な脚色がなされています。
三国志演義の内容は「3割本当で7割嘘」と言われるほど多くの演出がされていて、それゆえにとても面白く、「レッドクリフ」や「漫画三国志」における曹操の悪役っぷりは、全て小説「三国志演義」の影響を色濃く受けています。
悪の象徴として描かれる曹操
ではなぜ、「三国志演義」で曹操は悪役として描かれているのでしょうか?
それは、作品として売るために、物語的な面白さを追求した結果だったのではないでしょうか?
当時滅亡の危機に瀕していた漢王朝を滅ぼそうとする悪の曹操と漢王室を復興しようとする善の劉備で物語を色分けし、面白い物語として成立させようとする狙いがそこにはあったように思えます。
対してその反動か、最近では曹操への評価が見直され、曹操が悪役ではないとする物語も作られています。
例えば、李學仁原作の「蒼天航路」。
「蒼天航路」は正史「三国志」に準拠して描かれ、曹操を善、劉備を悪として描いている作品として非常に有名です。
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曹操がやった悪い事
では、曹操はいい人間だったのか?と聞かれると、素直に首を縦に振ることはできません。
曹操の悪逆非道っぷりは正史でもしっかりと描かれています。では、そんな曹操の史実上の悪逆っぷりを紹介していきます。
呂伯奢(リョハクシャ)一家の殺害事件
最初に曹操の悪逆っぷりが際立ったのは、呂伯奢(リョハクシャ)一家の殺害事件です。
この事件は、曹操が時の権力者・董卓暗殺に失敗し都から故郷に逃げ帰る際に起きました。
京都から逃げる途中、知人の呂伯奢(リョハクシャ)の家に泊まることになります。
呂伯奢(リョハクシャ)は留守でしたが、彼の息子達がもてなしてくれました。
しかし、曹操はもてなそうと料理を作っていた音を、自分を殺そうとしているのだと勘違いして、呂伯奢(リョハクシャ)の一家全員を皆殺しにしてしまいます。
この際、間違いに気づいた曹操は、逃げ出しますが、その途中で呂伯奢に会ってしまい、自分が息子らを殺してしまったことがバレるのを恐れ、呂伯奢も殺害してしまいます。
そして、恩人を殺害してしまった曹操は、一緒にいた陳宮という人物に対して、反省するどころか
「我人に背くとも人我に背かせじ」(俺が他人に背こうとも、他人が俺に背くのを許しはしない)
と、吐き捨てたのでした。
自分の利益のために他者を踏みつける、とんでもない人物ですね。恐ろしい事件でした。
徐州住民皆殺し事件
これは曹操の父親が陶謙(トウケン)という徐州の領主の部下に殺された時の事です。
曹操はこの時、自分の父が殺されたことに大変怒って陶謙の領土・徐州に進軍しました。
結局この戦いで、曹操は陶謙を倒すことはできませんでしたが、進軍から撤退するまでの間に徐州の領地の民衆を皆殺しにしました。さらに、人だけでなく犬や鶏のような家畜さえも皆殺しにし、一説によるとその死体の山で大きな川が堰き止められた程の大虐殺を命じたと言われています。
父親を殺したのは陶謙の部下であって、陶謙の領地の民衆にはなんの罪もないはずです。とんでもないやつですね。
それでもカリスマ。曹操という男
それでも、曹操は三国志の中で、とても高い人気を博しています。
それは、曹操が優れた詩人であるという事実や、政治家として屯田制をはじめとした効果的な政策を行ったという実績ももちろんあるでしょうが、何よりその圧倒的カリスマ性でしょう。
天下統一まであと一歩まで迫り、優秀な部下に優しく、軍事的な才能に溢れた悪のカリスマ・曹操。
そのカリスマは、1900年の時を超えて、我々を魅了し続けている。
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