キーワード解説:下流老人
貧困問題を表した言葉に「下流老人」というものがあります。
生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者のことを指します。
会社定年時には充分な資産を持っていても、さまざまな要因でこの状態に陥る可能性があるのです。
下流老人とは?
下流老人(かりゅうろうじん)とは、社会福祉士の藤田孝典さんがつくった造語のことです。
高齢者のひっ迫した生活問題を捉えた言葉です。
また、この藤田さんの著書の題名でもあります。
貧困という言葉がちらつきますが、資産に余裕があったにもかかわらず「下流老人」に転落したケースもあります。
高齢化した社会では、この「下流老人」が増えると予想されています。
下流老人の定義
藤田さんの著書では、下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」とあります。
著書では、2015年において下流老人は日本国内に推定600万〜700万人いるとされています。
具体的な事例を用いて、藤田さんは例を挙げています。
スーパーマーケットでは、見切り品の惣菜や食品を中心にしか買えずに、その商品を数点だけ持ってレジに並ぶ老人。
そのスーパーマーケットで、生活の苦しさから万引きをしてしまい、店員や警察官に叱責されている老人。
医療費が払えないため、病気があるにも関わらず治療できずに自宅で市販薬を飲みながら痛みをごまかして暮らす老人。
夏場に暑い中、電気代を気にして、室内でエアコンもつけずに熱中症を起こしてしまう人。
家族や友人がいないため、日中は何もすることがなく、年中室内でひとりテレビを見ている状態にある人。
収入が少ないため、食事がインスタントラーメンや卵かけご飯などを繰り返すような著しく粗末であり、3食まともに取れない状態にある人。
ボロボロの築年数40年の持ち家に住んでおり、住宅の補修が出来ないため、すきま風や害虫、健康被害に苦しんでいる人。
実例を挙げてみると、意外とピンときたり、多いかもしれないと思います。
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下流老人になってしまうケース
年収は1000万円程度、退職時には資産があっても、貧困になるケースがあります。
退職してすぐ、新築マンションを購入し、預金は一気に減りましたが、年金が月に30万円も受け取れるため、問題なく暮らせるだろうという考えでした。
ところが、妻が認知症を発症し、高額な医療費負担が発生し状況が一変します。
料金が高い老人ホームに入所し(しっかりとした施設を選んだ)ために、一時入所金が2000万円必要になったのです。
この時に貯金が尽き、入所した老人ホームは、月に17万円の費用がかかりますが、所得は月30万円ほど。
差し引きで手取りは13万円ほど。
住居を売却するにも、一度住んでしまえば値が大幅に落ちてしまいます。
自身の高齢ですので病気の危険性もあります。
こうして下流老人へと転落してしまうケースがあるのです。
まとめ
老後は2000万円以上必要と言われていますが、2000万円以上の所得を持っていたとしても、貧困に足を踏み入れてしまう可能性があります。
こういった老後を過ごそう、という計画をしっかり練って、安全な老後を過ごしましょう!