キーワード解説:氷河の後退
20世紀末から、環境問題が世界的な社会問題となっています。
特に、地球温暖化などが原因で各地で氷河の後退、減少が深刻です。南極、北極に限らず、人が住む陸地に囲まれたアルプス山脈やヒマラヤ山脈でも危惧されているのです。
地球温暖化による氷河の後退
20世紀から21世紀初頭にかけての気候変動が、氷河の後退(減少)をもたらしていると考えられています。
1994年以降、地球全体で28兆トンもの氷河が消えたとするデータもあるほどです。
地球温暖化と氷河の後退に対する研究は様々な研究機関や学者が行なっていますが、中には「90%以上の確率で人間の活動が原因で起きた気候変動が原因だ」とする研究結果も存在します。
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深刻なアルプス山脈の氷河融解
氷河と聞くと北極や南極をイメージするでしょう。
しかし、深刻な氷河の減少はヨーロッパのアルプス山脈でも起きています。
気温の上昇によって山の斜面に存在する氷河が溶けると、雪崩を引き起こす可能性があります。
地滑りや洪水によってインフラが崩壊することはもちろん、近くにできた湖やアルプス山脈から流れる川の水位が上昇し決壊する恐れもあるのです。
そうなれば、下流の集落にも当然影響が出ますし、今後住めなくなる土地が増える増えるかもしれません。
氷河の減少は、観光業にも影響を与えます。
アルプス山脈には全長20kmを超えるヨーロッパ最大の氷河「アレッチ氷河」があります。
2001年には世界遺産として登録されるほど見るものを魅了するこの氷河ですが、20世紀の100年間で約2km縮小しました。
さらには、気候変動による氷河の後退を受け、観光客の安全面を考慮してアルプス山脈の登山道のルートを一新しました。
このように、アルプス山脈の観光で生計を立てている自治体や会社は、環境が変化するたびに戦略を練り直しているのです。
しかし、今後の環境の変化は彼らの努力では太刀打ちできないほど目まぐるしいものになる可能性もあります。

世界最大の山脈「ヒマラヤ山脈」の氷河
8,000m級の山々が連なるヒマラヤ山脈でも氷河の後退が進んでいます。
国連環境計画(UNEP)の報告は、氷河の後退による湖や河川の決壊が甚大な被害をもたらす恐れがあると結論づけています。
ヒマラヤ山脈沿いの44の湖で起きている急速な水位の上昇が10年以内に決壊につながる可能性があると指摘しています。
インダス川、ガンジス川、メコン川、長江、黄河などアジアを流れる大河川の水源であるヒマラヤ山脈の氷河の後退は、様々な生態系にも影響を与えかねません。
小さな河川沿いに住む人口も合わせると20億人に登り、世界人口の4分の1がこの巨大な山脈の恩恵を受けています。
気候変動をはじめとする環境の変化がこんなにも大勢の人々の生活と結びつくのです。
最後に
氷河の後退による地球環境への影響は計り知れません。
このままの生活を続けていたら子どもたちの代が「壮大な雪山の美しさを目にすることができない」「○○の魚を知らない」という悲しい未来がきてしまうかもしれません。
私たち一人一人が深刻な「環境問題」と向き合うべき時がきているのです。