20’sは、シティポップ・リバイバルが来る【おすすめ12選】

【Streetから愛をこめて】若者で作る音楽のニュージェネ

反政府、自由・独立の象徴、若者の心象投影、社会への問題提起。実は音楽って、めちゃくちゃ社会的なシロモノ。

尾崎豊の「15の夜」、ボブディランの反戦歌。最近だと、アジカンのN2(No Nukes=脱原発)など、社会に対してのアンチテーゼを考えたとき、音楽は無視できない存在。

そして何より、そのエネルギーの源は、若者にあります。

最近起こりつつある日本の音楽の潮流の変化。オールドファッションの再定義は、言い換えれば、時代の再定義ともいえるもの。

その変化の最前線に、シティポップという存在があります。

音楽文化を中心的に担っていく若い世代の方々に(勿論、音楽は全世代のものですが)、その良さを知ってほしい!

ということで、シティポップを紹介します。

そもそもシティポップって何?

シティポップは、70年代から80年代に流行したポップス。

「都会的」なムードを持つ曲に対して用いられた言葉で、明確なジャンルの定義はありません。ジャズやファンク、AORなどの音楽ジャンルをミックスし、日本独自にアレンジしたもの、とでも言えましょうか。

この点で70年代のフォークソングや民謡、時を同じくして80年代に流行していたギターロック等とは一線を画すジャンルでした。

音づくりの特徴としては、シンセ等を多用している点があります。歌詞世界の舞台は都会であることが多く、大人の恋愛等アダルトチックな楽曲も存在します。

オザケンこと小沢健二の代表曲”今夜はブギー・バック”。国内の様々なアーティストにカバーされている。

逆輸入!?80’sのジャパニーズ・シティポップが海外でヒット

大滝詠一、山下達郎、南佳孝、細野晴臣、松任谷由美、大貫妙子、竹内まりや等、80年代はシティポップが隆盛を極めました。

しかし、時代が下るとともにそのブームは一旦は下火になり、いわゆる「J-POP」にとって代わられました。

ここで、突然のブーム再燃。2010年代後半に日本のシティポップの再評価が海外を中心に巻き起こります。

竹内まりや”Plastic Love”。2017年、非公式にYoutubeにアップされた動画が2400万回以上の再生を記録。異例の再ヒットとなった。

往年の日本のシティ・ポップが海外で人気を博し、日本に逆輸入されるという形に。

竹内まりやはその最たる例。本楽曲”Plastic Love”は発売当初、アルバム”VARIETY”に収録されるも、シングルカットはされていませんでした。

しかし2017年にYoutubeにて非公式にアップロードされた動画が海外を中心に異例のヒットを記録。元々海外ではJamiroquaiやMaroon 5、最近ではThe 1975などのポップスが人気であり、まさしく「再発見」された形です。

2400万回以上再生され、そのコラボやカバー動画なども多数作られました。

この流れに同調するように、日本でもシティポップ・リバイバルの流れが活発になりつつあります。

都会的な音楽が現代風に再アレンジされ、徐々にメジャーシーンに浸透しつつあります。早速見ていきましょう。

ニュー・シティポップ

1・Yogee New Waves

バンド名の由来はハリシ・マヘーシュ・ヨーギーから。四人組のバンド。Vo,G角舘健悟、B矢澤直紀を中心に結成。一曲目「Climax night」、熱帯夜の環七を、チャリで飛ばしながら聴きたい。

2・mabunua

mabanua=日本のプロデューサー、トラックメイカー、ドラマー、シンガー。レイ・ハラカミ、菅野よう子、七尾旅人、toeなどと共演。また、プロデューサーとして100曲以上の楽曲を手掛ける。シティポップといいつつ、壮大なランドスケープを感じさせる一曲目。飲みすぎた終電で聴いたら、そのまま落ちて、最寄りをすっ飛ばして終点まで行ってしまいそうだ。二曲目、気怠いシンセとブリッジミュートのギターの掛け合いが、小気味よい。

3・SIRUP

SIRUP=大阪出身のシンガーソングライターKYOtaroによるプロジェクト。R&B、ソウル、HIPHOP等ブラックミュージックを都会的に咀嚼。ソウルフル且つ変幻自在なボーカルが耳に心地よい。HONDA「VEZEL TOURING」のTVCMでもおなじみ。仲の良い友人を誘って首都高ドライブを敢行し、カーステレオで聴きたい。

4・WONK

wonk=2013年結成の4人組。エクスペリメンタル・ソウルバンド。ジャズやヒップホップ、ロックなどのジャンルが混然一体となったサウンドが特徴。一曲目”Cyberspace Love”はセロニアス・モンク生誕100周年記念アルバム「MONK’s Playhouse」収録。二曲目「Gather Round」はKing GnuのG.常田氏がMVを監督。なお、映像中で使用されたダルマは現在常田宅に引き取られているらしい。

5・DENIMS

DENIMS=大阪府堺市で結成の4人組バンド。2012年結成。「古い物好きだけど新しい事をしたい。大人だけど子供のように。お洒落だけど泥臭い。そんなバンド。」シティポップはシンセの登場率の高い音楽ジャンルではあるが、「fools」はギターのみであり、シンプルだ。しかし、空間をのこしたテンションコードのカッティングが、非常にマッチしている。

6・kiki vivi lily

kiki vivi lily=2015年8月、同名義で活動開始。HIP HOP、CLUB、R&B等を取り入れつつ、アーバンな楽曲を多数制作。”Blue in Green”はトラックメイカーとしてSHUKISHAがクレジット。ストッキングの80デニールって、調べたら、だいぶ分厚い。

7・TENDRE

TENDRE=河原太郎によるソロプロジェクト。ベース、ギター、鍵盤、サックスなどを演奏するマルチプレイヤー。

8・toconoma

toconoma=2008年結成のジャムインストバンド。ジャズ、ファンク、ラテン、ハウス、テクノ等の要素を取り込んだ楽曲が持ち味。Delorean、ストリート文化にも通ずるビビッドなMVも魅力だ。

9・Sun Rai

Sun Rai=サンフランシスコ、ではなくオーストラリア出身。San Francisco Streetは、そのまま、夜の高速道路で聴きたいような、メロウかつ直線的でシンプルな音作りが特徴だ。

10・Vaundy

Vaundy=作詞、作曲のみならず、アートワークや映像プロデュースも手掛ける。また、美術系大学に現役で通っている。「東京フラッシュ」「不可幸力」はシティポップとして取り上げたが、彼の持つ音楽的魅力はそこだけではない。ずばり、作風の振れ幅の大きさだ。「怪獣の花唄」では一転して、王道邦ロックを高らかに奏でているし、「灯火」はアコースティックギターの音色を全面に押し出したスタイリッシュなダンスナンバーとなっている。しかし芯がブレるなどということは毛頭なく、彼の艶やかで力強いのに、繊細な歌声が貫いている点が、いささか末恐ろしい。

11・さとうもか

さとうもか=1994年、岡山県生まれ。3歳でピアノでをはじめ、以降、ギター、サックス、合唱、声楽などを経験。次世代のユーミンと称される。2018年3月には1stフルアルバム「Lukewarm」をリリース。2019年5月に2ndアルバム「Merry go round」をリリース。唯一無二で、耳から脳裏にこびりついて離れない感のあるボーカルと、シティ感の更に先の現代的な音像がマッチして、破壊力抜群である。

12・くるり

くるり=最早、説明不要。くるりは時期によってその音楽性が大きく変化することでも知られ、「東京」「ばらの花」の1期、「ワールズエンド・スーパーノヴァ」の2期、「ロックンロール」の3期、など、幾度となくメンバーチェンジを繰り返してきた。またVo.岸田が2007年にオーストリア・ウィーンでのレコーディングを敢行。クラシックとオーケストラへの造詣を深め、音楽性に更なる深化を加えるなど常に目が離せないバンドである。「琥珀色の街、上海蟹の朝」は、第8期の作品。上京した若者は、いつのまにか「上海ガニ食べたい」とシティポップを歌っていたという、不思議。

さいごに

YOASOBI「夜に駆ける」、米津玄師「感電」、星野源「pop virus」等、ヒットチャートに上る楽曲の傾向に新たな兆しが見え始めています。

そして、シティポップ的要素を盛り込んだ音楽は、今着実にリスナーの耳に届くようになってきています。

ヒットチャートに並ぶ音楽も素晴らしいですが、ちょっと寄り道をして、こういった音楽を聴いてみるのもまた一興。

あなただけのお気に入りの一曲を、見つける旅に出よう。

瑛人の「香水」を君は知っているか

瑛人の「香水」って何?

ドルチェアンドガッバナーがやってきた

2020年を代表する音楽といえば、瑛人の香水となるのは間違いない。

2020年4月突如トップに躍り出たアーティスト・瑛人。

「この人は誰だ?」と思っているうちに、apple music、spotify、line musicといった各ストリーミングサービスで第一位を獲得した。

チャートに変化の予兆あり

「2019年:日本の音楽」と言われれば「King Gnu」と「official髭男dism」だった。

テレビやラジオでの露出が増え、世間からの注目度も一気に上がった。

SpotifyやAppleMusicなど各サブスクのチャートを見てもほとんどこの「四人組バンド」がTOPを占めていた。しかし、2020年の前半、「YOASOBI」「瑛人」がチャートTOPにランクイン。

2020年はまだまだ中盤だが、時代が動き出した感覚が確かにある。

「異色の存在」瑛人

今回、瑛人を取り上げるのは彼が「異色の存在」だからだ。

彼はどのレーベルにも属していない「本当に無名の状態から、一気にTOPに躍り出た」アーティストなのだ。

ちなみに、日本ではレーベル無所属のアーティストがチャート一位になるのは史上初めてのことだ。

先述したKing Gnuも、地道な音楽活動を重ねて注目を集め、レーベルとの契約を経てメディア露出が増えたことでその人気が爆発した。

「今のネット社会、レーベル契約やテレビ露出がそんなに大切か?」と思われるかもしれないが、大衆の注目を集めるためには現在もテレビやレーベルの力が重要だと言われている。

しかし、潮目が変わってきているのも事実だ。

例えば「Novelbright」というバンドは、去年の夏、突如、SNS上で路上ライブの映像がバズったことをきっかけに人気が出始めた。

彼らは、SNSを活用した戦略を練り、少しずつ知名度を上げていき、2019年度のバズリズムの「2020年にバズるアーティスト」の第一位に輝いた。

今年夏フェスがあれば、多くのステージを沸かせたことだろう。

SNS時代のスター誕生?

そんな「SNS時代」流れを決定づけたのが、今回紹介する瑛人。

この曲、ブレイクしたのは今年の4月。

では、その時期にリリースされたのかと思いきや、実は2019年の春から配信されている。

この曲は、1年間あまり注目を集めてこなかったのだ。

しかし、「TikTok」でこの曲をカバーや「歌ってみた」がたくさん配信されたことで流れが変わっていった。

そして、このブームは「FANTASTICS from EXILE TRIBE」の中島颯太が弾き語り動画を配信したことで、さらに広がっていった。

元々、コロナのなかで多くの人が自宅にいる中で、この曲はTikTokユーザー以外にも広がり、ついにチャート一位に輝いた。

彼は、戦略的にS N Sを使ったわけではないので「novelbright」とは、異なるが、SNSが普及して約10年立つ中で、やっと、SNSのシンデレラストーリーが誕生したことは感慨深い。

考察:香水と和歌

この曲は、サビの「ドルチェアンドガッバナー」のなんとも言えない、つい口ずさんでしまうような譜割りが特徴だ。

歌詞の物語としては、元カノからLINEが来たことを起点とする、元カノへの未練と、それを断ち切ろうという矛盾する思いを描いている。

香水の匂いと、元恋人という関係は、なんかよく聞いたことあるなと思ったが、

最古の元ネタはこれじゃないかなとふと思った。

さつきまつ はなたちばなの かをかげば むかしのひとの そでのかぞする

中高時代に古典の授業でやったことがある人もいるかもしれないが、この和歌は古今和歌集や伊勢物語に収録されていた歌で、意味は、5月に橘の匂いをかぐと、昔の恋人の香水の匂いを思い出す。というものである。

このように、香水の匂いと元恋人との関係は古典的なテーマなのだ。

香水はコロナ禍の話?

コロナ禍の中で、オンライン飲み会やオンライン授業の中で、様々な生活様式が変わっていった。コロナがなかったら、そろそろオリンピックだったのかと、ふと思い出してしまう。

香水は、そんなコロナがなければという話なのではないか?

何もなくても 楽しかった頃に戻りたいとかは思わないけど君の目を見ると思う

この話は、もちろん、元彼女との関係の頃に戻りたいという話だが、楽しかったコロナ以前の頃に戻りたいという思いは私達全体が共有している思いだろう。

ちなみに、歌詞に出てくるタバコと香水もコロナに関するキーワード。

友人やバイト先の社員の方と話していると、コロナで家にいることが増えたことで、

タバコを吸う量が増えてしまったという話をよく聞く。

これもある種のコロナの影響なのだろうか。

最後に香水について。

コロナの影響の中でも、オンラインで様々なことができることが証明された。

ただし唯一、オンラインで伝えることができないものそれが匂いだ。

匂いは、直接出会わないと伝えることができない。

その意味で、香水はコロナ以前の状態を示す象徴になっている、のかもしれない。

*ちなみに、この作品は2019年の作品なので、この解釈は1つのネタです。

あまり真剣にとらないでください。