【EUの役割】加盟国やイギリス離脱問題を解説〜何をしている所?〜

キーワード解説:EU(ヨーロッパ連合)

ここ数年のイギリスのEU離脱問題は、重要な国際ニュースの1つです。

「EU」は当たり前のようにニュースに出てくるワードです。
しかし、EUって何?加盟国は?何をするところなの?何を揉めてるの?
意外と答えられない方も多いかと思います。

今回は、EUとは何か、その歴史、EUが抱える諸問題についての基礎を紹介します。

EUの歴史

現在のEU加盟国

EUはEuropean Unionの略で、
日本語に直すとヨーロッパ連合です。
ヨーロッパの統合が目的で創られました。

現在、ヨーロッパの27ヶ国がその一員で、27ヶ国を合わせてEUと呼んでいるのです。

現在のEU発足は1993年のことです。
まだ出来てから20年も経っていないんですね。

「現在の」と付け加えましたが、以前は別の名前でヨーロッパの協力機構がありました。

まずは、現在に至るまでのEUの歴史を解説します。

EU加盟国(2020年10月現在)

フランス、西ドイツ(統合後もそのまま加盟)、イタリア、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ

デンマーク、アイルランド

ギリシア

スペイン、ポルトガル

オーストリア、フィンランド、スウェーデン

ラトビア、リトアニア、エストニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、キプロス、マルタ

ブルガリア、ルーマニア

クロアチア

27ヶ国

イギリス(2020年 離脱)

2つの世界大戦と「1つのヨーロッパ」構想

第一次世界大戦(1914~17)で戦場になったことでヨーロッパ中が物理的、精神的に大きなダメージを負いました。

1920年代、フランスの外務大臣が国際会議で「ヨーロッパ連邦案」を提唱した頃から、徐々に「ヨーロッパを1つに」という思想がありました。

協力体制へと世界が向かっていく中で、1929年に世界恐慌(現在のリーマン・ショックのような出来事)が起こりました。

以降、各国は自分の国を守ることだけに集中する流れへと傾き、決定打となったのがヒトラーの登場です。

その後、1930年代後半から1945年まで、第二次世界大戦が起こりました。

西ヨーロッパ諸国は再び荒廃し、アメリカ、ソ連の超大国の登場によってヨーロッパの経済的な地位は低下しました。

二度の世界大戦の反省と、フランスとドイツが第二次世界大戦後領土をめぐる100年近くの因縁を解決させたこと、そして上記の要因が重なって、再びヨーロッパを1つにする考え方が広まります。

この考えが、ヨーロッパの協力機構を生み出しました。

フランス外務大臣シューマンは、石炭と鉄鋼を共同管理することによる安全保障を唱え(シューマン・プラン)、1952年、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(=ECSC)が誕生しました。

加盟国はフランス西ドイツイタリアベルギールクセンブルクオランダです。
(この6ヶ国が欧州統合の中心となっていきます)

EUの前身「EC」の成立とイギリスの加盟

6年後、今度は関税での統合を目指してヨーロッパ経済共同体(=EEC)、原子力資源の統合を目指してヨーロッパ原子力共同体(=EURATOM)が相次いで結成されました。

1967年、この3つを統合するために6ヶ国によるヨーロッパ共同体(=EC)が発足します。
これが、現在のEUの前身です。

これはただ6ヶ国が集まっただけでなく、アメリカ、ソ連に次ぐ第3の巨大な経済圏が誕生したことを意味します。

一方で、イギリスはこの共同体には加盟せず、EECに対抗して自ら主導となって1960年にヨーロッパ自由貿易連合(=EFTA)を結成しました。
(イギリス、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、スイス、ポルトガル、オーストリアが加盟)

1973年、アイルランドとデンマーク、そしてEECに対抗していたイギリスを新たにEC迎え、加盟国は9ヶ国になりました。

1979年にはECの議会である欧州議会が成立しました。

以後、協力する事項や加盟国を増やして着々と巨大な機関となっていきます。

「EU」の発足

米ソ東西冷静終結東西ドイツの統一後の1992年、マーストリヒト条約が締結されました。

共通の外交(加盟国が足並みを揃えて外交する)、通貨の統一、欧州市民権(ECないならどこに住んでも良い)を目指すことを確認した条約です。

経済面だけでなく将来的な政治的な統合を目指しました(=ヨーロッパが1つの国になるということ)。

EC内の組織を改編し、新たな上記の条項を加えて1993年、ついに現在の形のヨーロッパ連合(=EU)が発足しました。

EUとなってからも加盟国を増やし、1999年には共通通貨のユーロ導入が決定されました。(発行は2002年)

ところが、ここ数年ニュースになっている通りイギリスが2016年の国民投票の結果離脱を表明、2020年に離脱し現在の加盟国は27ヶ国です。

(スイス、ノルウェーは現在も加盟していませんが、その話はまたどこかで…)

EUの役割・EU法とは

先ほども述べたように、EUとは巨大な1つの国です。
EUが日本だとすると、フランス、ドイツ、イタリアなど27の加盟国は都道府県ぐらいに思ってください。

ですから、EUの国会もありますし、中央銀行、法律など、EUでの共通の機関が多く存在します。

ヨーロッパ中がまとまって1つの国家を運営しているのです。

ちょっとここで余談ですが、、

EUが1つの国である、共通の法律がある、と言いました。

これをEU法と呼んでいます。

28ヶ国もあるとそれぞれの文化や考え方、法形態も多様であるため共通の法律を作るにあたって多くの困難がありました。

その例の1つが「チョコレート」の定義です。

「チョコレートは普通、カカオバター100パーセントの物を言うんだ」
という主張と
「別にミルクや砂糖が含まれていたって同じような味、風味ならチョコレートじゃないか」
という主張がありました。

結果、欧州議会の決議によって「チョコレートと呼べるのはカカオ95%以上含まれている物に限る」という結論になりました。

このように、「多様性」という言葉では片付けられない問題が出てくるたびに話し合いや議会で決議を取って、あらゆる意味で「1つ」にまとまっているのです。

EU離脱へ〜EUが抱える諸問題〜

EUの問題点〜①東西経済格差問題〜

順調だったEUですが、現在にいたるまで新たな問題に直面しています。

その1つが経済格差です。

2004年、2007年、2013年に旧社会主義国であった経済後進国の東欧諸国の加盟を認めました。

以前の西ヨーロッパ諸国だけの体制であった頃は、各国の景気や生活水準に大差がありませんでした。

(ギリシアは経済が安定していたとは言えませんが、1カ国だけであれば周りも援助しやすいですし、2000年にアテネオリンピックがあったため景気向上でなんとか持ちこたえていました。)

ところが、経済水準が東欧諸国がまとめて加入したため労働者が最低賃金の高い西欧諸国へ仕事を求めて押し寄せ、その国の労働者の仕事が減少していく事態となりました。

すると、働き手のいなくなった東欧諸国の経済はますます後退する、という悪循環に陥ります。

賃金に3倍の格差があっては、労働者にとっては当然ですよね。

EUの問題点〜②欧州危機〜

2つ目の問題は、財政状況です。

欧州危機(ユーロ危機)というワードを聞いたことがあるでしょうか。

2009年の出来事です。

ギリシアは政権交代後、新政権が今まで隠していた財政赤字を公表しました。

これがかなりの額であり、ギリシアはユーロを使用していたこともあってユーロの信用が大幅に低下します。

ギリシア国家そのものに対する不安から、ギリシア国債の下落、ユーロの下落、そして芋づる式に世界中の株価が下がりました。

それだけにとどまらず、2010年にはアイルランドの財政破綻、スペインポルトガルの財政状況への不安、そして2011年、イタリアの財政状況も危ぶまれイタリアはIMFの監視下におかれました。

ユーロ圏の国々の財政状況の緊迫が相次いで取り上げられ、「ユーロ」の存続に関わる事態となりました。

現在は(財源のある)ドイツが主導となって救済措置を取ったため一旦は落ち着きを見せていますが、本質は解決していません。

というのも、普通財政状況が悪化した場合(債務不履行を宣言した場合はなおさら)、自国の通貨は当然大暴落します。

すると、自国の通貨の価値が低いためやすい価格で海外にモノが売れます。(=輸出が伸びる)

その輸出で貿易黒字とし、さらに雇用を増やして産業規模を拡大して輸出を伸ばし…

といった好循環を生み出すことでゆっくりと経済が回復していきます。

ところが、ユーロという単一通貨を多くの国が使っているため、通貨の価値はユーロ採用国の総合評価で決まります。

つまり、ギリシアだけがこけても通貨が暴落しづらく、輸出を中心に復活、ということが困難になるのです。

また、いくら「同じ国、仲間」とはいえ何カ国も相次いで不安な状況に陥入りその都度助けを求められては、比較的経済や財政が安定している国から不満の声があがるのも無理はないかもしれません。

EUの問題点〜③移民・難民問題〜

そしてもう1つ、移民・難民問題が挙げられます。

アフリカからの難民受け入れ問題は以前からあったのですが、ここ10年ほどで中東からの難民が多く流入しています。

これもまた、先程の経済格差の問題につながり、先進国である西欧諸国からの不満の声が上がっているのです。

イギリスのEU離脱〜EUの転換期〜

このような諸問題に対する各国の足並みが揃わず、耐えかねたイギリスは2016年にEUを離脱するか否かをめぐる国民投票を行い、離脱派が過半数となります

どのような形で離脱をすすめるのかイギリス国内外で大揉めの末ついに2020年、ジョンソン首相がEUへ離脱を通達し初の離脱国となりました。

このイギリスの一連の動きはブレグジット(=Brexit)と呼ばれています。

今後、EUの諸問題はどのように収束してゆくのでしょうか。

今回は、EUとは何か、なぜ存在するのか、その歴史、諸問題について、簡単に紹介しました。

もともとは第二次世界大戦後にヨーロッパを1つにするという理念の下生まれた協力機構ですが、70年経った今新たな問題が生まれ、それが佳境を迎えているのが現状です。

ヨーロッパは多くの民族と宗教、言語、複雑な国境を持つ地域です。
そんな個性豊かな国々が多様性を認め合って生まれたEUは、今の困難を乗り越えられるのでしょうか。

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現地からみるブレグジットの進展

現地から見るブレグジットの進展

背景

イギリスのEUとの関係は、長年論争の的となっています。その主な理由は、EU法で移動の自由が可能になっている、EU圏内からイギリスへの移民の流入です。年間何万人単位でEUから移民を受けれていた事に対して、「イギリスらしさが失われる」だったり、「EUのルールに縛らずに自分たちの事は自分で決めたい」という声が高まり、2015年のイギリス総選挙では、反EUのイギリス独立党(UKIP)が13%の票を得ました。 イギリスのEUとの関係について否定的な声の高まりを無視することはできず、2期目の首相に選出されたデービッド・キャメロンは2016年にEU離脱の是非を問う国民投票の実施を約束しました。しかし、EUに残りたいキャメロン首相の思いとは裏腹に、離脱を支持する人が51.9%の票を得て、EUから離脱する事が決まりました。 この国民投票はイデオロギーの違いだけでなく、田舎と都会での相違も反映しています。

ブレグジットの影響

EU離脱したことで、イギリスは経済的に大きなダメージを負いました。イギリスがEUをどのように離脱するのかという不確実性は、GDP成長率の低下だけでなく、度々起きるポンドの急激な下落の原因となりました。さらに、日本の企業などがイギリスでの事業を撤退または縮小し、逆にヨーロッパでの事業を拡大する傾向にあります。EU離脱でイギリスはEUの一員として受けていた恩恵がなくなり、イギリスへの投資の減少にも繋がりました。離脱した事でイギリスは各国と自由に貿易協定を結ぶ事はできますが、締結までには一般的に約2年ぐらいかかるので、EU離脱での投資や労働力の損失をすぐに埋め合わせることはできないでしょう。

予想しにくい今後の展開

現在、イギリスはEU離脱をスムーズに進める為に、EUをすぐに離脱せずに、一年という期間でEUと新たな協定の交渉をする移行期間に入っています。しかし、交渉は貿易などの面でEUとイギリスの違いが浮かび上がり、行き詰まっています。また、コロナウイルスの影響で新協定の交渉が若干後回しされたせいで、お互いに溝を埋める事をできず、貴重な時間だけが過ぎていきました。今年の6月の終わりにイギリスは移行期間を延期する事ができましたが、何がなんでも来年EUを離脱すると公言していたジョンソン首相が延期を要請する事はありませんでした。

ブレグジットがイギリス国内で混乱を招き、さらなる分裂につながったので、EU離脱の問題をできるだけ早く終わらせ、先に進みたいという風潮が高まっています。多くの人はイギリスがEUと新協定を結ぶことを望んでいますが、ブレグジットに対するジョンソン首相の「Do or Die」という態度や、何がなんでもイギリスの主権を守りたいという政府の姿勢では妥協の余地はほぼありません。来年の一月まで約半年の移行期間が残っているものの、EUとイギリスが新協定を締結する可能性は低いと言われています。しかし、イギリスのEUからの新協定を締結できなかった場合(合意なき離脱)コロナウイルスの影響に苦しんでいるイギリス経済をさらに悪化させる可能性が大いにあるため、新協定の締結を交渉する際にイギリスは妥協する可能性もあり得ると思います。

最後に

コロナウイルスの流行により、ここ数ヶ月の間イギリスではブレグジットは多少忘れられていましたが、今のところイギリスの合意なき離脱が一番有力視されています。イギリス合意なき離脱をした場合、輸入品の価格の上昇と薬や生鮮食品の供給不足が予想されていて、これからイギリスで大学生活を始める私は不安しかありません。ですが最も残酷な部分は、私たちにできることはもう何にもないということです。

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